インベスコの視点

【米国投資適格社債】リスクバランスの変化:デュレーションと高格付け社債を選好

Invesco Fixed Income Special Report
要旨
  • 利回りの固定化。債券利回りは歴史的に魅力的な水準にあります。投資家は、金利が低下する前に高格付け債券に投資することで、この利回りを今後数年間固定化することができます。
  • 混雑を避けて早めに対処する。投資家は現金とマネーマーケットを大きく積み上げています。FRBが利下げに踏み切れば、「現金の壁」は再びリスク資産へと流れ、債券価格を押し上げ、利回りは低下します。利下げのタイミングを計るのは常に困難を伴いますが、現在は債券で待つことで報われる状況になっています。
  • 投資先を選ぶ。 国債が逆イールドカーブとなっているため、高い利回りを長期間維持するには、デュレーションとクレジット・リスクを取る必要があります。この目的を達成するには、投資価値を提供する大手銀行のようなセクターの高格付け社債が最適であると私たちは考えています。
  • どちらに転んでも損はない。投資適格債(IG)は、ソフトランディングや景気後退のシナリオで好パフォーマンスを発揮するでしょう。ソフトランディングの場合、金利は緩やかに低下し、債券投資家は高い利回りを長期間享受し続けるでしょう。景気後退局面では、FRBは利下げを加速させ、デュレーションによって債券のリターンを加速させる可能性が高いと思われます。さらに、このシナリオでは、IG債は株式のようなグロースの感応度が高い資産をアウトパフォームすることでしょう。

 

Q:2023年は「債券の年」になると考えられていましたが、少し停滞しているように思えます。マクロ環境において、債券に逆風が吹いている要因は何でしょうか?

ショーンバーグ:債券市場で大きなリターンが見られない理由のひとつは、経済成長が多くの人々の予想を上回る中で利回りが高止まりしていることが挙げられます。年初から、私たちはソフトランディングを基本シナリオとしてきましたが、それが現実のものになりつつあります。

図1:年間インフレ率は低下し、時間当たり平均賃金は鈍化している

雇用市場は引き続き好調で、インフレ率も昨年のピークである9%から3%台まで低下しています。金利は高水準で推移しており、良好なインカムが期待できますが、トータル・リターンにはその兆しがまだ現れていません。米連邦準備制度理事会(FRB)が2024年に利上げを停止し利下げを行うことで、期待されていたプラスのトータル・リターンがもたらされると考えています。
 

Q:米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルはいよいよ終わりに近づいているのでしょうか?

ブリル:私たちは今が終わりの時だと感じています。先物市場は今年後半の利上げの可能性を五分五分と示唆していますが、利上げがないとしても、現在5.25%~5.50%のフェデラルファンド金利は経済にとって抑制的と言えるでしょう。私たちは、FRBが再利上げをする必要はないと考えています。私たちの考えでは、金利据え置きはある意味、利上げのようなものと言えるでしょう。FRBの利下げ開始は2024年5月と予想しています。インフレ率が低下しているという事実は、FRBが利下げが必要だからとの理由でなく、利下げしたいとの理由から利下げすることを可能にするでしょう。

図2:実効フェデラルファンド金利とフェデラルファンド金利先物

Q:最大の投資機会どこにあると考えていますか?注目するセクターはありますか?

ショーンバーグ:クレジット・リスクをそれほど増やすことなく、適正な利回りを得られる段階にようやく到達しました。投資適格債、住宅ローン担保証券(MBS)、BB格のハイ・イールド債などのセクターで、利回りは軒並み魅力的な水準になっていると考えています。24カ月前に非投資適格と格付けされながら、8月にスタンダード&プアーズによってBBB+格に格上げされたネットフリックスのような一部の銘柄には強さが見られます。

現在の注目しているのは銀行セクターです。3月には過去最大規模の銀行破綻が3件発生し、銀行セクターのボラティリティが高まりました。私たちにとって、このような変動は潜在的な投資機会をもたらします。銀行ルールは銀行の安全性を高めるために変更されましたが、多くの銀行は依然としてスプレッドが拡大したままの水準で取引されています。「ビッグ6」銀行(バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックス、シティ、JPモルガン、モルガン・スタンレー)、およびスーパーリージョナルバンクや質の高い地銀は、過去の平均値よりスプレッドが拡大した状態で取引されており、、魅力的な投資機会を提供すると考えています。銀行セクターではスプレッドが縮小すると予想しており、これは追加的なアルファーをもたらすと考えています。

また、現在の水準ではエージェンシー・モーゲージ担保証券を選好しています。住宅所有者の観点からは、7%超の住宅ローン金利は厳しい状況ですが、投資家としてはこの水準は魅力的です。住宅ローン担保証券の利回りがこれほど高いのは久しぶりのことです。

図3:金融セクターは平均スプレッドを上回り、工業セクターは下回っている

Q:下振れリスクについて考えると、私たちの基本シナリオはソフトランディングですが、それは100%の確率ではありません。成長率が加速すれば、FRBが追加利上げに踏み切る可能性もあります。その可能性に備えて、ポートフォリオをどのようにポジショニングしていますか?

ブリル:この問題は「損益分岐点」の計算に行き着きます。利回りが非常に高いため、債券のトータル・リターンがマイナスに転じるには、利回りが大幅に上昇する必要があります。経済が好調を維持すれば、今後6~9カ月は6~7%の利回りが続くでしょう。景気が悪化すれば、トータル・リターンは大きくなるでしょう。「どちらに転んでも損はない」ような状況です。重要なのは、デュレーションを短くしないことです。イールドカーブのフロントエンドに留まり、魅力的な利回りを獲得したいのはやまやまですが、それにはリスクが伴います。FRBが利下げ開始した時に、デュレーションを求め奔走するのを避けるには、利回りを長く固定化することです。
 

Q:これほど高い利回り、つまり6%~6.5%台の利回りを見たのは久しぶりですが、戦略全体ではどうでしょう?

ショーンバーグ:注目すべきは再投資と計画リスクです。6.5%台の利回りを見るには、2009年や2000年当時を振り返る必要があります。確かに、今はイールドカーブのフロントエンドで魅力的な利回りが見られていますが、FRBが利下げを開始すれば、そうした利回りはなくなってしまうでしょう。図4は、Bloomberg US Corporate Bond Indexのイールド・トゥ・ワーストが6%に達したときの5年先のトータル・リターン(年率)を示しています。これらの例は、利回りが6%でスタートしたときの利回りの力強さを示しています。

図4:指数のイールド・トゥ・ワーストが6%を超えた場合の5年間のリターン(年率)

Q:市場の牽引役という点では、どのような展望がありますか?

ショーンバーグ:FRBが利下げに踏み切った場合、「現金の壁」が押し寄せてくると思われます。マネーマーケット・ファンドに積みあがったキャッシュ残高は数十年で最も高い水準にあります(図5)。通常、このようなシナリオの場合、投資家は取引に出遅れがちになります。FRBが利下げに踏み切り、現金が様子見姿勢から解き放たれると、市場全体で利回りが低下する可能性が高いからです。これまでのサイクルで見てきたように、少し早い方が遅いよりも良い選択となるでしょう。

図5:マネーマーケット・ファンドの残高は過去最高を記録

 

 

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