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欧州バンクローン市場、月次アップデート 2022年11月

欧州バンクローン市場、月次アップデート 2022年11月
2022年10月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与したとともに、価格変動がプラスとなったことから、月間トータル・リターンは+0.65%となりました1
 

Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2022年10月のトータル・リターンは+0.65%となり、内訳は価格変動が+0.18%、金利収入が+0.47%となりました。年初来のリターンは-5.42%となっています1

今月は2022年7ー9月期の決算発表が始まり、企業業績は市場予想を概ね上回りました。ストックス欧州600指数構成銘柄の増益率は、銀行とエネルギー関連銘柄が牽引し、約1%上昇しました2。インフレが高止まりする状況下で世界経済が減速しており、投資家は各中央銀行による金融引き締め政策がハト派に転換する可能性を注目しています。プラス材料として、欧州の天然ガス価格は今夏の高値から80%以上続落し、また、今冬のガス供給能力の目標も達成されました。

10月のCS WELLI平均価格は0.22ユーロ上昇し、90.20ユーロとなりました1 。10月のバンクローン新規発行市場における発行額は4億ユーロと小規模であったものの、流通市場におけるバンクローン価格が堅調に推移したため、10月のCLO新規発行は4件で約12億ユーロとなりました。また、新規発行CLO(AAA格)のスプレッドはEURIBOR+220bp程度の水準にとどまっているため(年初はEURIBOR+100bp程度)、この水準でCLO裁定取引が成立するのは困難な状況です。新規発行市場におけるバンクローン発行額が限られているため、CLOのマネジャーは主に流通市場でバンクローンを購入しています。CLOの新規発行額がバンクローンの発行額を上回っているため、需給面でローン価格の下支えとなり、10月は特にクレジットの質の高い発行体のローン価格がその恩恵を受けました。

2022年10−12月期に入り、予定されるローンの新規発行は少数に留まっています。経済及び地政学上の不確実性が継続しているため、過去半年でのレバレッジド・バイアウトやM&Aに伴う案件は限定的であり、引き受けられた案件のほとんどはウクライナ紛争以前に組成されたものでした。

一方、今月はタイミングを見ながらバンクローンを追加発行したり、あるいは発行体に現金や流動性の余裕がある場合に買い戻したりするケースが散見されました。今後も同様の取引が行われる可能性があると見られています。

金利上昇局面(例えば、欧州中央銀行(ECB)の中銀預金金利)にある一方で、バンクローン発行に向けてスポンサーや経営陣との協議は前向きに進められており、また、金利上昇リスクは概ねヘッジされています。

10月末のCS WELLI の額面価格合計(市場規模)は約4,170億ユーロとなり、前月末比0.5%上昇、年初来で7.6%上昇しました1

 

リターン

10月のCS WELLIのセクター別リターンでは、食品・製薬が+3.89%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いてメディア・通信の+1.74%、運輸の+1.63%となりました。最も低いパフォーマンスとなったセクターは、ゲーム/レジャーの-2.45%、続いて耐久消費財の-1.31%、金属/鉱業の-0.58%でした 1

格付け別では、10月は「BB」格が+1.61%と最も高く、「B」格が+0.74%、「CCC」格が最も低い-4.80%となりました1

10月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比0.22ユーロ上昇し、90.20ユーロでした1 。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは7.03%で、前月末比0.26%と縮小しました1

10月のクレディ・スイス欧州ハイ・イールド債券(Credit Suisse Western European High Yield)指数は+1.88%のリターン(年初来では-14.21%)となり、スプレッド・トゥ・ワーストは6.15%でした3

ファンダメンタルズ

欧州中央銀行(ECB)は今月、予想通り、主要政策金利を0.75%引き上げて1.50%としました。同行の政策理事会は、「金融緩和からの脱却に向けて大きく進展」したことを強調しました5。また、同理事会は、「さらなる利上げが見込まれる」5 とし、また、データ重視の姿勢とともに会合ごとの判断を維持することを伝えました。ECBは、足元で欧州の経済成長が鈍化していることに一層注目しているようです。

ECBは、足元のインフレ見通しに大きな変更はなく、インフレ期待が制御できなくなる懸念に触れた文言を維持しました。その一方で、景気後退がインフレ見通しに影響を与えると考えているようです。

ECBは2022年12月と2023年2月にそれぞれ0.5%、2023年3月に0.25%の利上げを行い、最終的には政策金利を2.75%まで引き上げると予想されています。インフレ圧力がさらに強まれば、同行が政策金利をさらに引き上げる可能性があります。

ユーロ圏の2022年7−9月期のGDP成長率(速報値)は、前期比0.2%増、前年同期比2.1%増となりました。2022年4−6月期(前期比0.8%増)を下回りましたが、市場予想を上回りました。ドイツのGDP成長率(前期比0.3%増)は市場予想(前期比0.2%減)を大きく上回るサプライズとなりました。高インフレと景況感の悪化で家計の購買力が低下しているにもかかわらず、個人消費が経済成長を牽引しました。

10月のユーロ圏・調和消費者物価指数(HICP)は前年同月比0.73%上昇し、市場予想を上回る+10.66%となりました。コア指数は0.27%上昇し、市場予想にほぼ沿った+5.03%となりました。これらは、今月のECB理事会後に噂されたハト派への転換の可能性について、その現実味に疑問を投げかけています。

ユーロ圏・総合購買担当者景気指数(PMI)の確定値は47.3となり、速報値から若干上昇しました。しかしながら、製造業PMIは46.4、サービス業PMIは48.6となり、ユーロ圏経済の減速を示唆しています。また、ECBによる最新の銀行貸出調査では、2012年以降最も信用状況が悪化していることが指摘されています。ロシアがノルドストリーム経由のガス供給を無期限に停止したことで欧州のガス市場の緊張が続いており、欧州経済の減速がより悪化して長期化するリスクが高まっています。

10月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.43%でした4。過去平均は年3.04%となりました4

指数のトータルリターン(%)

脚注

  • 1

    Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2022年10月31日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。

  • 2

    ストックス欧州600指数およびS&P500指数は、2022年10月31日現在。

  • 3

    Credit Suisse Western European High Yield Indexはユーロ建て、2022年10月31日現在。

  • 4

    Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2022年10月31日までを対象に集計しています。

  • 5

    欧州中央銀行(ECB)のプレスリリース(2022年10月27日付)を参照。

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