米国バンクローン市場、月次アップデート 2024年10月
9月のバンクロ-ン市場は、新規発行の増加が見られるも底堅く推移
米国は9月に利下げを実施し、正式に利下げ局面入り
9月のバンクロ-ン市場は底堅く推移
9月のバンクローン市場は月間で+0.73%のリターンとなり、年初来では+6.61%のリターンとなりました¹。また、月間の価格リターンは-0.04%、金利リターンは+0.78%となりました¹。
8月上旬に市場のボラティリティが高まりましたが、その後に景気への懸念が後退して資金の流出入がバランスしたことで、ローン市場は安定しました。良好な市場環境のなかで、9月の新規発行額は、リプライシング案件とリファイナンス案件の増加だけでなく、180億ドル近いM&A案件にも牽引されて急増しました。年初来でリプライシングの動きが見られるものの、ローンの平均スプレッドへの影響は限定的(年初来で25bps低下)でした¹。セカンダリー価格は大きく動かなかったものの、新規発行が増加したことで、額面以上で取引されるローンの割合は47%から27%に低下しました⁴。
米連邦準備制度理事会(FRB)は9月18日に50bpsの利下げを実施しました。金融緩和局面入りしたことで、9月のバンクローンのリターンは、ハイ・イールド債(+1.34%)および投資適格社債(+1.34%)を下回りました³。格付別のリターンは、BB格(+0.46%)、B格(+0.66%)、CCC格(+1.84%)となりました¹。ローン市場の平均価格は月末で95.61となり、8月末(95.69)とほぼ同水準でした¹。現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードカーブを含めて8.24%のイールドとなりました¹。
ファンダメンタルズ
大方の予想通り、FRBは9月18日に50bpsの利下げを実施して、正式に利下げ局面入りしました。パウエル議長は、FRBが今後も徐々に利下げを実施して底堅く推移している景気を下支えすることを示唆しました。
12ヵ月累計の額面デフォルト率は8月の0.78%から0.80%に小幅上昇しました。新たなデフォルトは1件(Wheel Pro)で、また、以前に発生した1件のデフォルトが今回の計算期間から外れました⁴。80ドル未満で取引されるローンの割合は前月の3.82%から3.43%に低下し、4月以降では2か月連続して4%を下回りました⁴。
市場の需給環境
堅調なCLOの新規発行によってローンの新規発行はほぼ吸収され、9月も良好な需給環境がローン価格を下支えしました。
9月のCLOの新規発行は8月(99案件で472億ドル)から11%減少し、89案件で418億ドル (うちリファイアンス案件とリセット案件が296億ドル)となりました²。
個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは、9月に0.39億ドル(うち、前者から10億ドルの資金流出、後者から9.78億ドルの資金流入)の資金流出とな りましたが、年初来では98億ドルの資金流入となっています²。
9月のローンのグロスでの新規発行量は、先月(258億ドル)から大きく増加(+276%)して971億ドルとなり、2010年以降の9月単月で見た発行額としては最高でした。リファイアンス案件(337億ドル)とリプライシング案件(415億ドル)を除いたネットでの新規発行(219億ドル)は、8月(90億ドル)からかなり増加しました²。
投資機会
FRBが利下げを開始したため、過去の利下げ局面におけるローン市場動向を振り返りたいと思います。図1にあるように、ローン市場は(コロナによる外生的なショックを除けば)金利が低下しても投資家の資金がかなり維持される傾向がありますが、これはローンの有効性が利上げ局面のみに留まらないことを反映しています。金利の低下につれて発行体のファンダメンタルズは改善しやすくなり、デフォルトやクレジットのリスクが低下します。さらに、政策金利がFRBの予想する最終到達金利3.25%まで低下すると仮定すれば、インプライド・クーポンは6.9%(現在のスプレッド373bps)となり、過去のローン・クーポン平均の6.1%を上回る水準にとどまります。このように、利下げ局面入りしてもローンは高めで安定したインカムを引き続き提供することができると思われます。
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1.
クレディスイス・レバレッジド・ローン指数。2024年9月30日現在。
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2.
JPモルガン。2024年9月30日現在。
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3.
クレディスイス・レバレッジド・ローン指数ならびにブルームバーグ。2024年8月31日現在。クレディスイス・ハイ・イールド債券指数、ブルームバーグ米国投資適格社債指数。
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4.
Pitchbook LCD。2024年9月30日現在。
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G2024-09-010
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