インベスコの視点

戦術的資産配分:2023年8月号

Tactical Asset Allocation August 2023
短期的な回復見通しへの改善を受け、ベンチマーク対比で
リスクをオーバーウェイト。
新興国株式、バリュー株、中小型株、クレジットを選好。

 

要約
  • 経済データと市場センチメントは、2023年後半の回復見通しを引き続き立証しています。世界的な金融引き締めサイクルがピークに達し、安定した成長とインフレ率の低下と相まって、短期的に「ゴルディロックス」シナリオの可能性が高まっています。
  • グローバル戦術的配分モデル1 において、ポートフォリオのリスクをオーバーウェイトし、債券、新興国市場、バリュー株、中小型株、シクリカル・セクターに対して株式を選好します。低格付けクレジットをオーバーウェイト、デュレーションを中立、米ドルをアンダーウェイトとします。

 

マクロ・アップデート

良好なマクロ環境と投資家のリスク選好度の改善を受け、IISでは直近の資産配分を変更しましたが、グローバル金融市場はこの1カ月間、引き続き底堅く推移し、ディフェンシブ・セクターや安全資産によりも、相対的にリスクが高く、よりシクリカルなセクターが一貫して広範にアウトパフォームしました。米国の経済データがコンセンサス予想を上回り底堅く推移していることや、中央銀行のコミュニケーションに重要な変化が見られ、世界的な金融引き締めサイクルの終わりに光が見えていることから、ほとんどの地域で短期的な成長期待が改善しています。米国の国内総生産(GDP)統計は、第1四半期に比べ第2四半期の成長が再加速している証拠を示しており、この成長率も上方修正されました。よりタイムリーな景気先行指数は、耐久消費財受注、製造業、消費者マインド調査に牽引され、第3四半期にさらにポジティブな勢いがあることを示しています。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の記者会見でこうした改善について言及し、「最近の経済の回復力を考慮すると、FRBスタッフはもはや今年の景気後退を予想していない」と強調しました。さらに重要なのは、FRBが引き締めサイクルの終わりが近づいていることを明確に示したことで、9月会合が現段階では事実上五分五分の判断(利上げか休止か)になることをほのめかしています。どちらにしても、2回の雇用統計と2回の物価統計の結果によって政策金利が25bpsほど小幅に変動する可能性が高く、FF金利が500bps以上上昇した後の市場にとっては取るに足らない上げ幅といえるでしょう。

FRBが短期的に政策判断は経済データ次第とするスタンスは、欧州中央銀行(ECB)にも反映されました。ラガルド総裁は、FRBと同様、9月会合が利上げか一時停止かの「決定的な可能性」であること、政策立案者は引き続き経済データ次第でオープンマインドであること、しかし結論から言えば、ECBがこの引き締めサイクルでカバーすべき領域はそれほど広くないと予想していることを明確に強調しました。しかし、FRBとは対照的に、ECBは景気先行指数が依然としてモメンタムの弱まりを示しているため、成長率予測を下方修正する可能性があります。

IISの世界経済のマクロレジーム(市場局面)のフレームワークは、2023年後半にはグローバルな景気サイクルが回復する可能性が高いことを引き続き示唆しており、したがって戦術的資産配分のシクリカルなスタンスを支持しています。
図表1a:マクロ・レジーム認識は回復期に移行

出所:ブルームバーグ、マクロボンド、Invesco Investment Solutions調査・試算。Invesco Investment Solutionsの独自先行経済指標。マクロ局面のデータは2023年7月31日現在。景気先行指数(LEI)は、経済成長の水準を示す独自の先行指標。グローバル・リスク選好度サイクル指数(GRACI)は、市場のリスクセンチメントを示す独自の指標。先進国(除く米国)には、ユーロ圏、英国、日本、スイス、カナダ、スウェーデン、オーストラリアが含まれる。新興国市場には、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、台湾、中国、韓国、インドが含まれる。

米国の国内総生産(GDP)統計は、第1四半期に比べ第2四半期の成長が再加速している証拠を示しており、この成長率も上方修正されました。よりタイムリーで景気先行指数は、耐久消費財受注、製造業、消費者マインド調査に牽引され、第3四半期にさらにポジティブな勢いがあることを示しています。
しかし、FRBとは対照的に、ECBは景気先行指数が依然としてモメンタムの弱まりを示しているため、成長予測を下方修正する可能性があります。
図表1b:欧州の先行指標は減速を続けているが、米国では各セクターで改善傾向に

出所:ブルームバーグ、マクロボンド、Invesco Investment Solutions調査・試算。Invesco Investment Solutionsの独自先行経済指標。マクロ局面のデータは2023年7月31日現在。景気先行指数(LEI)は、経済成長の水準を示す独自の先行指標。グローバル・リスク選好度サイクル指数(GRACI)は、市場のリスクセンチメントを示す独自の指標。

日銀はイールドカーブ・コントロール政策(YCC)を変更し、10年物国債利回りの上限を従来の0.5%から1.0%に引き上げると発表しました。この措置は、市場、企業、消費者のセンチメント調査を通じて日本のインフレ期待が徐々に高まっていることを反映することを意図しており、日銀は国債購入により大きな柔軟性を導入することができます。しかし日銀は、今後2年間のコア・インフレ率が2%のインフレ目標を下回る1.7%~1.8%程度で推移するとの見通しを明らかにし、緩和的な金融政策が維持される可能性が高いことを示唆しました。こうした動きによって、日本や世界の国債市場が乱高下したり、混乱したりすることはないでしょう。

市場はこうした動きを素直に受け止め、インフレ率の低下、政策金利のピークアウト、労働市場の回復力、成長期待の安定・改善といった、短期的な「ゴルディロックス」シナリオの可能性を見出しています。この1カ月間のシクリカルな再評価は、セクターや地域間のクレジット・スプレッドの縮小、債券に対する世界株式のアウトパフォーム、先進国株式や大型株に対する新興国株式や小型株などのリスクセグメントのアウトパフォームに表れています。IISの世界経済のマクロレジーム(市場局面)のフレームワークは、2023年後半にはグローバル景気サイクルが回復する可能性が高いことを引き続き示唆しており、したがって戦術的資産配分のシクリカルなスタンスを支持しています。(図表1および図表2をご参照)。

過去1カ月間のシクリカルな再評価は、セクターや地域間の信用スプレッドの縮小、債券に対する世界株式のアウトパフォーム、先進国株式や大型株に対する新興国株式や小型株などのリスクセグメントのアウトパフォームに顕著に表れています。
図表2:成長期待の高まり示唆する市場センチメントが急改善

出所:ブルームバーグ、MSCI、FTSE、Barclays、JPMorgan、Invesco Investment Solutions調査・試算。1992年1月1日から2023年7月31日までのデータ。Invesco Investment Solutionsの独自先行経済指標。景気先行指数(LEI)は、経済成長の水準を示す独自の先行指標。グローバル・リスク選好度サイクル指数(GRACI)は、市場のリスクセンチメントを示す独自の指標。過去のパフォーマンスは、将来の運用成果を保証するものではありません。

投資ポジショニング

先月のポートフォリオ・リポジショニングに続き、今月は最小限のポートフォリオ調整で、グローバル戦術的配分モデルのベンチマーク対比でリスクをオーバーウェイトするスタンスを維持します。新興国市場、シクリカル・セクター、バリュー株、中小型株を選好し、債券に対して株式をオーバーウェイトしています。低格付けセクターを通じたクレジット・リスクを高め、デュレーションは中立を維持しますが、米国経済のインフレ・モメンタム・インディケーターが緩やかに上昇したことを受け、インフレ連動債へのエクスポージャーを一般債に比べ増やしました(図表3をご参照)。米ドルのアンダーウエイト・エクスポージャーを維持します(図4、5、6、7をご参照)。

詳細:

  • 株式では、バリュー株や中小型株など、営業レバレッジが高く、成長期待の反発に対する感応度が高いシクリカル・ファクターをオーバーウェイトする一方、低ボラティリティ、クオリティ、大型株などのディフェンシブ・ファクターをアンダーウェイトします。市場サイクルの変曲点では、直近の勝者と敗者の間で反転効果が発生する傾向があるため、モメンタムをアンダーウェイトします。同様に、ヘルスケア、生活必需品、公益事業、テクノロジーよりも、金融、資本財・サービス、素材、エネルギーなどのシクリカル・セクターへのエクスポージャーを選好します。地域的には、リスク選好度の改善と米ドル安期待に支えられ、新興国市場をオーバーウェイトしています。欧州の成長モメンタムは依然として弱まっているため、米国株と先進国株(米国を除く)の中立スタンスを維持します。
  • 債券では、信用スプレッドの縮小とボラティリティの低下が続いています。ハイ・イールド債、バンクローン、新興国ハード・カレンシー債を通じ、クレジット・リスク2のオーバーウェイトを維持しています。成長率はトレンドを下回っているものの改善傾向にあることから、ボラティリティは引き続き抑制され、クレジット市場は安定した利回りとトータル・リターンを提供すると予想します。投資適格債と国債は引き続きアンダーウェイトし、デュレーションは中立のスタンスを維持します。米国のインフレ・モメンタムが緩やかに上昇したことを受け、インフレ連動債を一般債に対してオーバーウェイトする一方、ユーロ圏と英国のインフレは引き続き減速しているため、これらの市場では一般債を選好します(図表3をご参照)。
  • 為替では、景気回復局面では通常、リフレーションによる米国以外の資産への力強い資金フローを伴うため、米ドルをアンダーウェイトとします。利回り格差は依然として外国通貨に対する米ドルを支えていますが、安全資産への資金流入が弱まる局面では、割高なバリュエーションが逆風となります。先進国では、ユーロ、英ポンド、ノルウェークローネ、スウェーデンクローナを、スイスフラン、日本円、豪ドル、カナダドルに対して選好します。新興国市場では、韓国ウォン、台湾ドル、中国人民元などの低利回り通貨に対し、コロンビア・ペソやブラジル・レアルなどの魅力的なバリュエーションを持つ高利回り通貨を選好します。
米国のインフレ・モメンタムが緩やかに上昇したことを受け、インフレ連動債を一般債に対してオーバーウェイトする一方、ユーロ圏と英国のインフレは引き続き減速しているため、これらの市場では一般債を選好します。
図表3:米国のインフレ・モメンタムは緩やかに上昇、欧州と英国は物価が一段と下落

出所:ブルームバーグ、2023年7月31日現在のデータ、Invesco Investment Solutions調査・試算。米国のインフレ・モメンタム・インディケーター(IMI)は、消費者物価や生産者物価、インフレ期待調査、輸入物価、賃金、エネルギー価格などの指標を対象に、過去3カ月間のインフレ統計の変化を測定します。プラス(マイナス)は、過去3カ月の平均でインフレ率が上昇(低下)していることを示します。

図表4:戦術的資産配分のポジショニング(相対比較)

出所:Invesco Investment Solutions、2023年8月1日。米ドル以外の通貨は、MSCI ACWIインデックスの通貨構成に代表される外国為替エクスポージャーで示されています。例示的目的のみ。

図表5:戦術的資産配分のポジショニング(ファクター)

出所:Invesco Investment Solutions、2023年8月1日。例示的目的のみ。ニュートラルとは、均等に加重されたファクター・ポートフォリオを指します。

図表6:戦術的資産配分のポジショニング(セクター)

出所:Invesco Investment Solutions、2023年8月1日。例示的目的のみ。独自のセクター分類手法に基づくファクターおよびスタイル配分から導き出されたセクター配分です。2023年11月30日現在。シクリカル:エネルギー、金融、資本財・サービス、素材。ディフェンシブ:生活必需品、ヘルスケア、情報技術、不動産、公益事業。ニュートラル:一般消費財・サービス、コミュニケーション・サービス。

図表7:戦略的資産配分のポジショニング(通貨)

出所:Invesco Investment Solutions、2023年8月1日。例示的目的のみ。通貨配分プロセスでは、外国為替市場における次の4つの要因を考慮します。1)世界の他の地域に対する米国の金融政策、2)コンセンサス予想に対する世界の成長率、3)通貨利回り(すなわちキャリー)、4)通貨の長期的なバリュエーション。

Footnotes

  • 1.

    ベンチマークはMSCI All Country World Index 60%とBloomberg Global Aggregate Index (Hedged) 40%で構成。

  • 2.

    クレジット・リスクは、DTS(デュレーション×スプレッド)で計測。

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