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欧州バンクローン市場、月次アップデート 2025年3月

2025年2月の欧州バンクローン市場 月次アップデート
2025年2月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与し、月間トータル・リターンは+0.66%となりました。

S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&PUBSWELLI」または「指数」)の2025年2月のトータル・リターンは+0.66%となり、内訳は価格変動が+0.10%1、金利収入が+0.56%となりました。なお、年初来のトータル・リターンは+1.51%となっています。

2月は、地政学リスクおよび国際貿易の不確実性が金融市場に影響を与えたため、リスク資産のパフォーマンスは市場によってばらつきのある展開となりました。投資家は引き続き米国の政策動向を注視し、メキシコ、カナダ、中国からの輸入品への関税方針や、トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との会談などが注目されました。かかる状況下、2月の米国株式市場は1%下落して月末を迎えました2

一方、欧州株式市場は、2月にストックス欧州600指数が3.7%上昇するなど3、底堅く推移しました。背景には、欧州中央銀行(ECB)が緩和的な金融政策を継続するとの見方や、防衛費の増額によって各国政府支出が拡大するとの思惑が広がったことなどが挙げられます。

2月の欧州バンクローン市場も底堅く推移し、トータルリターンは+0.66%となりました1。流通市場における指数構成銘柄の平均価格は0.49ユーロ上昇し、足元では平均97.97ユーロとなりました。流通市場の良好な需給環境のなかで指数構成銘柄の60%以上が額面価格を上回り、リプライシングが多く行われました1

今月、フランスの大手通信会社アルティスが債権者との債務再編を完了し、負債比率を6.4倍から4.6倍まで削減した上で債権者に株式を付与しました。この240億ユーロに及ぶ債務再編は、過去1年間ではグローバルで最大規模でした。同社が2月26日に発表した内容によると、担保付債権(担保付きシニアローン等)を保有する投資家は、額面に対して87セントの現金(無担保債権投資家の場合は25セント)および(ローン契約内容や発行体のガバナンスが強化された後の)同社株式の31%を受け取ることになりました。この合意に基づく債務再編は担保付債権者にとって好ましい結果と見なされ、市場の反応も良好でした。

CLOからの旺盛なローン需要に対して、ローンの新規発行予定がそれほど多くないことから、流通市場のバンクローン価格は上昇しました。2月の新規ローンの発行額は140億ユーロとなり、前年同期比で34%増加しました4。一方、年初来の新規発行の約3分の2はリファイナンス案件でした。M&A案件は5%減少し、2024年2月の48億ユーロに対して約45億ユーロとなりました4。かかる状況下、底堅いローン需要を受け、新規発行ローンのスプレッドは格付に応じてEURIBOR+250-400bpの範囲で推移しました。新規発行の平均スプレッドはEURIBOR+350bp程度となり、流通市場でもローン価格が下支えされました。

CLOに関しては、2月は18件で約90億ユーロのCLOが新規発行され、5件で約20億ユーロのリセット案件が発生しました。年初来の新規発行額は約120億ユーロで前年同期比で約2倍に増加し、また、リセット案件は約50億ユーロで前年同期比で約3倍に達しました。新規発行が増加したにもかかわらず、スプレッドは2025年に入り大幅に縮小しました。特に、CLOノート(AAA格)のスプレッドは約10bp低下し、EURIBOR+120bp程度の建値で推移しました。

今後、M&A案件のローンの新規発行は徐々に増加すると思われますが、CLOの新規発行は記録的な水準であり、その旺盛なバンクローン需要が流通市場におけるローン価格を下支えすると思われます。

図表 1:バンクローン供給とCLO需要の推移
リターン:2025年2月
  • 2月のS&PUBSWELLIのセクター別リターンでは、食品・製薬が+1.92%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて林産品/パッケージングの+1.57%、メディア・通信の+1.23%となりました1。マイナスリターンになったセクターはエネルギーの▲0.13%のみとなりました1
  • 2月のS&PUBSWELLIの格付別リターンでは、「CCC」格が+2.23%と最も高く、「B」格が+0.57%、「BB」格が最も低い+0.32%となりました1。マイナスリターンとなった格付けはありませんでした。
  • 2月末におけるS&PUBSWELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比で0.49ユーロ上昇し、97.97ユーロとなりました1。CSWELLIの3年ディスカウント・マージンは4.62%となり、前月末比で0.03%縮小しました1

 

ファンダメンタルズ
  • 2月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は2.4%となり、1月の2.5%から低下しました。エネルギーインフレ率の低下が総合指数を引き下げる要因となりました。また、コアインフレ率も2.7%から2.6%へと低下しました。
  • 欧州中央銀行(ECB)の1月の定例理事会議事録(2月下旬に公開)によれば、政策金利は今後も引き下げられる可能性が高いことが示唆されています。 1月の定例理事会では全会一致で0.25%の利下げ(政策金利を2.75%に引き下げ)となりましたが、政策金利の水準は依然として抑制的と見なされています。議事録ではさらなる利下げが示唆されていますが、利下げペースが変更されるかどうかについては言及されておらず、景気の下振れリスクは利下げを早めるほど大きくないという意見もあれば、政策金利が中立金利に近づくなかでより慎重な対応が必要との意見も見られました。3月6日に0.25%の利下げを行った後でECBが利下げを休止するかどうかは、地政学リスクや関税問題などの進展次第と思われます。関税については、インフレへの影響は不透明ながら軽微と見られている一方で、GDPに対しては明らかにマイナスの影響があると思われます。
  • 2月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は、前月と変わらず50.2となりました。これは年率換算で約+1.0%の経済成長率を示唆しているものの、ECBの+1.2%という成長予測を下回っています。ドイツでは、2月に行われた総選挙で新政権が発足して政治的な不確実性が軽減されました。それによって今後の成長期待が高まり、米国の関税などによる悪影響が相殺される可能性がありますが、企業もドイツ新政権による経済の底入れを期待しているようです。
  • 2月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.30%でした5。過去平均は年率2.75%となりました5
投資機会

ECBが引き続きハト派的な金融政策を継続する中、資金調達コストの低下はクレジット市場にプラスの影響を与えると思われます。また、CLOによるバンクローン需要は引き続き堅調です。全体として、バンクローン市場の需給バランスが良好であることを背景に、バンクローンは低いボラティリティと高いリスク調整後リターン(図表2参照)を引き続き提供することが期待されます。

図表 2:安定したパフォーマンス
各資産の相対利回り
  • 1.

    S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (S&P UBS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、20252月28日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。

  • 2.

    S&P500指数は、米国の大手企業約500社の時価総額をもとに算出されている株価指数です。マグニフィセント7は、アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラの総称です。2025年2月28日現在。

  • 3.

    欧州株式の指標はストックス欧州600指数(STOXX Europe 600 Index)です。2025年2月28日現在。ストックス欧州600指数は欧州株式市場を幅広く表す指標です。

  • 4

    PitchbookDataInc.より、2025年2月28日現在。

  • 5

    Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2025年2月28日までを対象に集計しています(除く、ディストレス債)。

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