欧州バンクローン市場、月次アップデート 2025年1月
.jpg)
2024年12月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与し、月間トータル・リターンは+0.51%となりました。
S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2024年12月のトータル・リターンは+0.51%となり、内訳は価格変動が▲0.15%1、金利収入が+0.66%となりました。また、2024年通期のトータル・リターンは+8.53%となりました。
2024年は、欧州経済が課題を抱えながらも緩やかに回復した一方で、米国経済が堅調に推移しました。世界経済は、成長や安定に影響を及ぼす様々な要因が入り混じっている状況です。
かかる環境下、バンクローン市場は堅調に推移し、2024年のS&P UBS WELLI構成銘柄の平均価格は97.41(2023年末の96.62から上昇)となりました。同指数は、2024年を通じて毎月プラスのトータル・リターンとなりましたが、名目スプレッドは1年を通じてほぼ横ばい(足元でEURIBOR+396bp)で推移しました。また、欧州中央銀行(ECB)が利下げに転じたこともあり、オール・イン・クーポンは昨年比0.90%低下して7.40%となりました。さらに、CCC格のバンクローンの年初来トータル・リターンは+20.18%となり、発行体の信用力の向上が見て取れます。なお、2024年の3月頃に、フランスのAltice/SFR社のリファイナンスなどがバンクローン市場に一時的な影響を与えましたが、その後すぐに反転(同社を巡る環境も改善)しました。
ユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)や国内総生産(GDP)などの指標は(1%未満の低水準ながら)欧州経済の成長を示し、また、サービス業の相対的な堅調さが示されました。一方、過去数年にわたってガス・エネルギー・ショックの影響を受けたドイツ経済は、相対的に低調な状況が続いています。重要なことは、インフレ率が年間を通じて低下してECBの目標値である2%に近づき、それによって同行が6月に利下げに転じたことです。2024年を通じてECBは4回の利下げを行い(合計1%)、政策金利は3.00%に低下しました。なお、米国経済がソフトランディングするとの見方から金融市場にリスクオンのセンチメントが広がって世界の主要株価指数が上昇し、クレジット市場を支援しました。
バンクローン最大の買い手であるCLOの新規発行は、CLOノート(AAA格)のスプレッドが約75bp縮小してEURIBOR+130bp前後の水準となったことで、一年で大きく増加しました。12月は過去この時期に見られないほど活発な動きとなり、18件(新規発行6件、リセット取引12件)が新規発行されました。
年初来のCLO発行は、新規発行額が484億ユーロ(うちリファイナンス/リセット案件が318億ユーロ)となり、2021年の新規発行額386億ユーロを上回る過去最高水準となりました。当面の新規発行は足元での高水準なペースで安定的に推移するとともに、スプレッドが大幅に縮小したことでリセット案件やリファイナンス案件がさらに増加すると思われます。
バンクローンの供給はそれに追随して、グロスベースで多くのバンクローンが新規発行されました。機関投資家むけローンのグロス新規発行高は、前年比約140%増の約800億ユーロとなり、その半額はリファイナンス案件となりました。
M&A案件は、今後増加する兆しが見られます。資金調達コストが低下して景気後退懸念が薄れるなかで、経営陣の先行きへの自信が深まったことでM&Aのパイプラインは前年の2倍に増加しました。また、足元のレバレッジド・バイアウト(LBO案件)の動きはまだ低調なものの、プライベート・エクイティ(PE)では投資資金を回収してリミテッド・パートナー(LP)に返還する圧力が高まっており、2025年はLBO案件が増加すると思われます。

リターン:2024年12月
12月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンでは、航空宇宙・防衛が+1.75%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いてサービス+0.80%、耐久消費財の+0.79%となりました1。マイナスリターンになったセクターは、▲0.77%となったエネルギーのみでした1。
12月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、 「B」 格が+0.60%と最も高く、 「BB」 格が+0.52%、 「CCC」格が最も低い+0.07%となりました1。
12月末におけるS&P UBS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比で0.03ユーロ下落し、97.71ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.72%となり、前月末比で0.20%拡大しました1。
ファンダメンタルズ
市場予想の通り、ECBは12月に政策金利を0.25%引き下げて3.0%としました。同行の定例理事会の声明では、これまでの「インフレ目標を達成するため十分に制限的な政策金利を維持する」という文言が削除されて、ハト派的な内容になりました。
最近の経済予想がこの背景にあり、ECBは今後数年間の経済成長率とインフレ率予想を下方修正しました。具体的には、2025年の経済成長率を1.1%(前回予想から0.2%下方修正)、2026年を1.4%(前回予想から0.2%下方修正)と予想しています。また、インフレ率に関しても、2025年の総合インフレ率を2.1%(前回予想から0.1%下方修正)、2026年は更に低下して1.9%と予想しています。
12月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は49.5となり、引き続き景気後退を示唆したものの、予想の48.2を上回りました。サービス業PMIは51.4となって予想の49.5を上回り、再び景気拡大を示唆する水準となりました。
為替に関しては、月を通してみると、ユーロは対米ドルで2022年11月以来の最低水準まで下落し、足元では約1.0265ドル前後で取引されています。米国による関税引き上げ懸念や米連邦準備制度理事会(FRB)による慎重な利下げスタンスなどによって、ユーロ安の傾向が9月下旬から顕著になっています。
ロシアとウクライナの天然ガス輸送協定が失効したことを受けて、欧州のエネルギー懸念が高まりました。北欧の気温が特に低くなっている状況と重なり、天然ガス先物価格は2023年10月以来で初めて50ユーロ/MWhを超えました。
12月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.42%でした3。過去平均は年率2.78となりました3。
投資機会
ECBの利下げによる資金調達コストの低下がクレジット市場を下支えすると思われます。CLOによるバンクローン需要は引き続き堅調です。また、中期的にはM&Aの増加が見込まれ、LBOローンの組成を牽引すると思われます。2024年を通してみると、良好な需給環境を背景にして、バンクローンは低ボラティリティかつ高いリスク調整後のリターン(図3)を提供するアセットクラスとして選好されましたが、2025年も引き続き強い需要が見込まれます。


-
1.
S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (S&P UBS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2024年12月31日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。
-
2.
Pitchbook Data Inc. より、2024年12月31日現在。
-
3.
Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2024年12月31日までを対象に集計しています。
ご利用上のご注意
当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。
G2025-01-003
そのほかの投資関連情報はこちらをご覧ください。https://www.invesco.com/jp/ja/institutional/insights.html