欧州バンクローン市場、月次アップデート 2025年2月
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2025年1月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与し、月間トータル・リターンは+0.84%となりました。
S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2025年1月のトータル・リターンは+0.84%となり、内訳は価格変動が+0.22%1、
金利収入が+0.62%となりました。
年初の金融市場は概ねプラスリターンとなりました。例えば、S&P500種指数およびSTOXX欧州600指数は市場最高値を更新し、欧州バンクローン市場(上記の月間リターン参照)も堅調に推移しました。今月はインフレ、関税、人工知能(AI)技術の競争激化などが、金融市場の主要テーマとなりました。米国では、米国債利回りが一時上昇したものの、インフレが落ち着きを見せたため、利回りは月末にかけて低下しました。また、中国のディープシークが新たなAIを発表したことで、既存のAI関連企業やテクノロジー企業全般の企業価値に影響を与えました。加えて、トランプ政権による関税導入の方向性は依然として不透明であり、月末にはカナダ、メキシコ、中国に対する関税が発表(カナダ、メキシコに関しては、後に一時停止)され、市場の注目を集めました。
欧州では、2024年10-12月期のユーロ圏域内総生産(GDP)速報値が予想を下回り、欧州中央銀行(ECB)は、予想通りに政策金利を25bp引き下げ、2.75%としました。欧米の主要中央銀行が利下げを進める一方で、日銀は政策金利を0.5%に引き上げました。
欧州バンクローン市場は年初から活発な動きとなりました。約120億ユーロの機関投資家向けバンクローンが新規発行され(昨年12月は2億ユーロ、昨年11月は110億ユーロ、昨年1月は70億ユーロ)、1月単月としては2022年以降で最高水準となりました2。また、リファイナンス案件の発行額は80億ユーロとなり、新規発行の約7割を占めました2。
また、バンクローン市場では、ローンへの旺盛な需要に対して実質的な新規発行量が抑制されています。そのため、S&P UBS WELLI構成銘柄の多くがパーを上回って、200億ユーロを超えるリプライシングが行われました。また、ディスカウント・マージンは約75bp縮小し、B格/B2格のバンクローンはEURIBOR+325-350bp付近でリプライシングされました。米国バンクローン市場も同様で、市場関係者は「米国市場との競合でクロスボーダー案件のマージンが縮小」2と伝えています。指数構成銘柄の平均価格は97.70近辺(数年来の高水準1)で底堅く推移しています。指数構成銘柄の多くがパーを上回っていることから1、リプライシングの動きは当面続くと思われます。
CLOの新規発行は4件、リセット案件は5件となり、また、少なくとも7件が発行に向けたマーケティングに入っています。CLOノートのスプレッドは縮小し、CLOノート(AAA格)はEURIBOR+130bpを下回る水準となっています。CLOウェアハウスからの旺盛なローン需要がある一方で、ローンの実質的な新規発行量は少ないため、良好な需給環境となっています。
今後はM&Aの活動が増加すると予想されます。レバレッジド・バイアウト(LBO)案件は足元では低調なものの、プライベート・エクイティ(PE)が投資資金を回収してリミテッド・パートナー(LP)に資金を返還する必要に迫られていることから、今年はLBO案件が増加すると思われます。

リターン:2025年1月
- 1月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンでは、航空宇宙・防衛が+1.20%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて耐久消費財の+1.18%、食品・製薬の+1.16%となりました1。マイナスリターンになったセクターはなく、プラスリターンになったセクターで最もパフォーマンスが低かったセクターは、エネルギーの+0.21%でした1。
- 1月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、 「B」 格および「CCC」格がそれぞれ+0.83%と最も高く、「BB」 格が最も低い+0.59%となり1、マイナスリターンとなった格付けはありませんでした。
- 1月末におけるS&P UBS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比で0.07ユーロ上昇し、97.48ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.69%となり、前月末比で0.03%縮小しました1。
ファンダメンタルズ
- 中国のディープシークによる新しいAIモデルの発表にともない、月末にかけて金融市場は大きく変動しました。1月27日に米国のテクノロジー株が売られ、ナスダック総合指数は約3%、エヌビディアは約17%下落しました3。しかしながら、この下落は一日限りのものとなり、ナスダック総合指数は12月の高値からわずか約3%下落しただけで月末を迎えました3。トータル・リターンを見ると、マグニフィセント・セブンは1月に2.5%上昇しています4。このように、AIを巡る動き(ボラティリティ)は、すべての市場参加者が注視するテーマとなっています。
- 2024年10-12月期のユーロ圏域内総生産(GDP)速報値は予想の+0.1%を下回り、伸び悩む結果となりました。欧州の天然ガス先物価格は厳冬や供給問題を背景に約9%上昇し、2023年10月以来の高値(メガワット時当たり約53ユーロ)となりました。
- ECBは0.25%の追加利下げを決定し、政策金利を2.75%としました。同行は足元の金融政策を「抑制的」と表現しており、さらなる利下げを示唆しています。また、ラガルド総裁は「政策金利は中立金利には達していない」とコメントしました。
- 1月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は50.2となり(12月は49.6)、予想の49.7を上回りました。製造業PMIの改善が見られた一方で、サービス業PMIは51.4とやや低下しました。国別では、ドイツの総合PMIが予想を上回って上昇し、2024年6月以降で初めて50を上回りました。一方、フランスの総合PMIは改善したものの48.3となり、引き続き景気の後退を示唆しました。
1月時点の主要PMIの発表値と予想は、以下の通りです。
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- ユーロ圏総合PMI:50.2、予想49.7、前月49.6。
- ユーロ圏製造業PMI:46.1、予想45.5、前月45.1
- ユーロ圏サービス業PMI:51.4、予想51.5、前月51.6。
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- 2024年10-12月期のユーロ圏域内総生産(GDP)は景気の減速を示唆していましたが、1月の欧州委員会の調査は2025年1-3月期での改善を示唆するものとなりました。これは上記の1月のPMI速報値が景気の回復を示唆したことと整合しています。また、景気動向指数は1.5ポイント上昇して95.2となり、引き続き過去最低に近い水準ではあるものの上昇に転じています。
- 1月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.17%でした5。過去平均は年率2.76%となりました5。
投資機会
ECBの利下げによる資金調達コストの低下がクレジット市場を下支えすると思われます。CLOによるバンクローン需要は引き続き堅調です。また、中期的にはM&A活動の増加が見込まれ、LBOローンの組成を牽引すると思われます。良好な需給環境を背景にして、バンクローンは低ボラティリティでかつ高いリスク調整後のリターン(図2)を提供しやすい資産クラスとなっています。


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1.
S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (S&P UBS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2025年1月31日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。
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2.
Pitchbook Data Inc. より、2025年1月31日現在。
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3.
ナスダック総合指数。同指数は、ナスダック証券取引所に上場するほぼすべての銘柄を含む株式市場の指数です。2025年1月31日現在。
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4
マグニフィセント・セブンは、アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラ、全社全体の総称です。2025年1月31日現在。
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5
Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2025年1月31日までを対象に集計しています(除く、ディストレス債)。
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