欧州バンクローン市場、月次アップデート 2024年12月
2024年11月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与し、月間トータル・リターンは+0.91%となりました。
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index(以下「CS WELLI」または「指数」)の2024年11月のトータル・リターンは+0.91%となり、内訳は価格変動が+0.29%1、金利収入が+0.62%となりました。
11月は米大統領選が大きな焦点となり、ドナルド・トランプ氏が次期米大統領に選ばれました。また、米議会選でも上下両院で共和党が過半数を占めたことを受けて米国株が上昇し、S&P500指数は約6%の月次リターンとなりました。一方、トランプ次期大統領が関税の引き上げを示唆したこともあり、ストックス欧州600指数の自動車・部品セクターは約4%下落しました。フランスでは、予算案の強行採決を図った政府の存続懸念が強まったことでフランスCAC指数が1.5%下落するとともに、独仏10年国債利回りのスプレッドは7bp拡大して81bpとなりました。また、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースへの懐疑的な見方と同時に、欧州中央銀行(ECB)が今後さらに利下げを進めるとの思惑が広がりました。それによってユーロは対ドルで約3%下落し、月間では過去18カ月で最大の下落幅となりました。地政学リスクに関しては、ウクライナが初めてロシア国内への攻撃を行い、また、ロシアのプーチン大統領が核指針を改定したことで懸念が高まりましたが、一方でイスラエルとヒズボラが一時的に停戦したことで原油価格が下落しました。
かかる環境下、11月のバンクローン市場は堅調に推移し、月間トータル・リターンは+0.91%となりました。これは主に、金利収入(+0.62%)が牽引したもので、CS WELLI構成銘柄の平均価格は前月から0.40ユーロ上昇して97.74ユーロとなりました。また、11月のグロスの新規発行は増加して100億ユーロ(10月は80億ユーロ、前年同月は30億ユーロ)となりました。CLOからの旺盛な需要によって多くのローン価格がパーを上回り、11月のグロスの新規発行の約70%がリプライシング/リファイナンス案件となりました。バンクローン市場は休暇シーズンが近づくにつれて新規発行の減速が見込まれるものの、12月中旬頃まで新規発行が続くと思われます。需給環境が良好であり、アレンジャーが積極的に案件に取り組んでいることでスムーズな新規発行が継続しています4。11月のグロスのCLO新規発行はリセット/リファイナンス案件が金額の約半分を占め、また、(ネットの)新規発行案件とリセット/リファイナンス案件はともに11件となりました。11月のCLO新規発行は48億ユーロと堅調で、年初来で108案件・450億ユーロのCLOが新規発行されました。CLOノート(AAA格)は欧州の銀行や新規参入の投資家に支えられてEURIBOR+130bp前後の水準で推移しており、バンクローンへの旺盛な需要が継続すると思われます。
リターン:2024年11月
11月のCS WELLIのセクター別リターンでは、ゲーム/レジャーが+1.09%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて林産品/パッケージングの+1.08%、耐久消費財の+1.08%となりました1。マイナスリターンになったセクターは、▲0.22%となったエネルギーのみでした1。
11月のCS WELLIの格付別リターンでは、「CCC」格が+1.77%と最も高く、 「B」 格が+0.90%、 「BB」 格が最も低い+0.90%となりました1。
11月末におけるCS WELLI構成銘柄の平均価格は、前月末比で0.40ユーロ上昇し、97.74ユーロとなりました1。CS WELLIの3年ディスカウント・マージンは4.52%となり、前月末比で0.16%縮小しました1。
ファンダメンタルズ
11月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は前月比1.9ポイント低下して48.1となり、予想の49.9を下回りました。総合PMIは1月以来の低水準となりましたが、悪化の背景は主としてサービス指数が低下(2.4ポイント低下して49.2)によるものです。製造業指数は再び低下し、また、生産指数も10月の上昇から反転(0.7ポイント低下)して45.1となりました。
11月のユーロ圏消費者物価指数(速報値)は予想と同じ2.3%となって前月の2.0%から上昇しましたが、エネルギー・インフレ率の上昇が主な要因です。また、コア・インフレ率は2.7%と前月から横ばいとなった一方で、財のコア・インフレ率は0.5%から0.7%に上昇し、食品のインフレ率は2.9%から2.8%に低下しました。
2024年7-9月期のユーロ圏GDP成長率は前期比+0.4%となり、市場予想および9月時点でのECBの予想である+0.2%を上回りました。
タカ派の独ブンデスバンクのナーゲル総裁は、11月25日の講演でECBはインフレ率が2%に達するまで利下げを待つべきでないとコメントし、予想以上に賃金が上昇する可能性や、米国の関税引き上げによるインフレリスクはあるものの、3.25%の政策金利は依然として高い水準であると示唆しました。
11月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は0.61%でした3。過去平均は年率2.8%となりました3。
投資機会
ECBの利下げによる資金調達コストの低下がクレジット市場を下支えすると思われます。CLOによるバンクローン需要は引き続き堅調です。また、中期的にはM&Aの増加が見込まれ、LBOローンの組成を牽引すると思われます。全体的には、良好な需給環境を背景にして、バンクローンは低ボラティリティかつ高いリスク調整後のリターン(図3)を提供するアセットクラスとして、引き続き選好されています。
-
1.
Credit Suisse Western European Leveraged Loan Index (CS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2024年11月30日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。
-
2.
Pitchbook Data Inc. より、2024年11月30日現在。
-
3.
Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2024年11月30日までを対象に集計しています。
-
4.
LCDの2024年11月29日の記事を参照。
ご利用上のご注意
当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。
G2024-12-010
そのほかの投資関連情報はこちらをご覧ください。https://www.invesco.com/jp/ja/institutional/insights.html