グローバル・ビュー

米国株一強時代の構図とその注目点

Invesco Global View

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

要旨
2024年を振り返って―米国株の時価総額増加額が他を圧倒

グローバル株式市場において米国株の強さが突出する構図が続いています。2024年中にグローバル株式市場の時価総額は12.2兆ドル増加しましたが、米国株はそのうち、11.5兆ドル、全体の94.7%を占めました(図表1をご覧ください)。生成AIに関連した銘柄が米国に集中していた点が、2024年のグローバル株式市場における米国株の強さを支えたと考えられます。

米国株市場は海外勢と米国家計がけん引

最近の米国株式市場の動きを主要投資主体による取引の点からみると(図表5をご覧ください)、①2022年秋以降、海外勢が大きく買い越したこと、➁米国家計による株式投資への前向きの行動が株価の上昇や安定に大きな役割を果たしたこと、➂保険や年金といった機関投資家がリバランス目的からネットでの株式の売り手であり続けたこと―が注目されます。

米国家計が保有するキャッシュが投資に向けられる可能性

今後、中期的には、FRBが利下げを実施していき、MMFの利回りが低下する環境になると予想されますが、その過程で、米国家計がMMFへの投資資金を株式・債券投資に振り向ける可能性があり、株価のサポート要因として注目されます。

 

2024年を振り返って―米国株の時価総額増加額が他を圧倒

 グローバル株式市場において米国株の強さが突出する構図が続いています。ブルームバーグの調べによると、2024年中にグローバル株式市場の時価総額は12.2兆ドル増加しましたが、米国株はそのうち、11.5兆ドル、全体の94.7%を占めました(図表1)。米国株市場の時価総額の増加分が全体の9割を超えたのは、近年では初めてのことです。2024年末時点でのグローバル株式市場の時価総額が123.6兆ドルであったのに対して、米国のそれは62.0兆ドルでした。欧州は主要8市場、中国市場、日本市場は、それぞれ、13.8兆ドル、10.0兆ドル、6.4兆ドルを、それぞれ、記録しました(図表2)。

(図表1)グローバル株式市場時価総額の年間増加額
(図表2)グローバル株式市場の時価総額(単位:兆ドル、2024年末)

 このように、時価総額ベースでは、米国市場はグローバル株式市場の半分程度のシェアを有していますが、2019年以降、米国は時価総額の純増額ペースでは他を圧倒してきました。2024年の米国では、景気が好調を維持する中、インフレの落ち着きに伴ってFRB(米連邦準備理事会)が高金利政策の是正に乗り出しました。インフレが低下し、利下げに対する期待感が強まったことが、テクノロジー分野以外の株価をけん引しました。その一方、生成AIが将来生み出す成果に対する期待感が高まる中、マグニフィセント7(エヌビディア、アマゾン・ドット・コム、アップル、テスラ、アルファベット、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフトを指します)をはじめとするテクノロジー株が大きく評価を高めました。生成AIに関連した銘柄が米国に集中していた点が、2024年のグローバル株式市場における米国株の強さを支えたと考えられます。一方、 2024年にドルが他の主要通貨に対してかなり上昇したことも、ドルベースでの時価総額の増加額中の米国株のシェアを高めることに寄与しました。

 国際収支統計によってグローバルな証券投資についてのクロスボーダー・フローをみると、2024年1-9月期において、海外勢(非居住者)による米国株式のネット購入額は2,798億ドルにのぼっており、2023年の購入額(1,330億ドル)を大きく上回りました(図表3)。一方、ユーロ圏や新興国・地域などの居住者は海外の株式を大きく買い越しました。これらは、世界の主要地域から高水準の対米株式投資が実行されたことを示唆しています。過去15年のデータをみても、海外勢は米国株式市場に多額の投資を実行してきています(図表4)。

(図表3)グローバルにみたクロスボーダー証券投資フロー
(図表4)米国から見たクロスボーダー証券投資フロー

 従前から、世界最大の規模を擁する米国株市場はグローバル市場を左右してきました。2020年、2021年、2023年、2024年は米国での株価上昇が、他の市場での株価上昇をけん引しました。逆に、2022年は米国株の下落が、その他市場での株価下落につながりました。米国以外の地域から積極的に米国株式に投資する傾向が続いてきたことで、米国株のグローバル株式市場への影響力は、コロナ禍以降に、さらに強まったと言えるでしょう。このことは、今後、仮に米国の株価が下落するような場合には、他の市場にも相応の悪影響が出ることを意味しているように思えます。 

米国株市場は海外勢と米国家計がけん引

 コロナ禍以降の米国株式市場の動きを主要投資主体による取引の点からみると(図表5)、大きな特徴が見い出せます。第1は、2022年秋から現在までの上昇相場の中で、海外勢が大きく買い越し、それが株価上昇を強力にサポートしたとみられる点です。この期間は、株式市場において生成AIに対する期待感が大きく向上した期間にあたります。このことは、海外勢が、自国の銘柄にはない、あるいはあったとしても限定的な規模でしか投資できない生成AI関連の銘柄への投資を米国投資に求めた可能性を示唆しています。米財務省の統計によって海外投資家による地域別の米国株式投資状況をみると(図表6)、2023~2024に欧州投資家が積極的に米国株式に投資したことがわかります。

(図表5)米国:投資家別の株式投資フロー
(図表6)米国への非居住者による株式投資フロー

 第2は、米国家計が株価の上昇や安定に大きな役割を果たしている点です。米国家計は、コロナ禍が最悪の局面にあった2020年から2022年の初めにかけて、積極的に株式に投資した後、株価が大きく下落した2022年にあっても保有株式を積極的に売却しませんでした(再び図表5をご覧ください)。米国家計は、株価が上昇に転じた2023年には株式のネットでの売り手となりましたが、2020年からの購入額と比較すると、その売却額は限定的であったと言えます。そして、2024年に入ると、米国家計は再び株式のネットでの買い手となりました。米国家計が株式投資に対して前向きのスタンスを維持したことが、米国株を強力サポートしたと言えそうです

 第3は、少なくとも過去10年間において、保険や年金といった機関投資家がネットでの売り手であり続けた点です。これは、過去10年間の米国市場においては、株価が順調に上昇基調を維持してきたことで、保険や年金といった機関投資家にポートフォリオ・リバランスのための株売却需要があったためと考えられます。その例外は2022年であり、株価が下落したことでリバランス需要がなかったために保険や年金はネットでの株式売却を実行する必要がなかったと考えられます。つまり、米国株式市場は、保険や年金と機関投資家によるリバランスのための売りを吸収しながら、株価の上昇を達成したことになります

米国家計が保有するキャッシュが投資に向けられる可能性

 米国株式市場を支える重要な役割を果たした米国家計による資金フローをみると(図表7)、コロナ禍以降、MMFの保有額を増やしてきたことがわかります。米国家計は、2022年から2023年初にかけて現金・預金を債券投資に振り向けましたが、MMFについては保有額を大きく増やしてきました。これはFRBが高金利政策を採用する中、MMFが利回りの面で魅力的な投資先であったことを反映しているとみられます。今後、中期的には、FRBが利下げを実施していき、MMFの利回りが低下する環境になると予想されますが、その過程で、米国家計がMMFへの投資資金を株式・債券投資に振り向ける可能性があります。これは米国株式市場のサポート要因として、今後注目したいと思います

(図表7)米国家計による投資フロー

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