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ロシア・ウクライナ危機:原油や景気後退リスクなどに関する投資家からの質問に回答する

原油や景気後退リスクなどに関する投資家からの質問に回答する
〔要旨〕
一部にインフレ圧力が強まる:ロシア・ウクライナ危機によるエネルギー価格とその他コモディティ価格の急騰が主要因である
米国債市場ではボラティリティが高まる:米10年国債と2年国債の利回り格差(スプレッド)が縮小。これは景気後退が差し迫っているとの予兆ではないと考える一方、そのリスクは高まっている
ポートフォリオの分散化を維持することが重要である:長期投資の場合、株式への投資を放棄するべきではなく、コモディティなどのオルタナティブ投資を含む、資産クラス間や資産クラス内での十分な分散投資を行うことが重要
 
原油価格が上昇を続けているが、先進国経済への影響は?そしてインフレはどれほど悪化するのか?
米国10年債と2年債の利回り格差(スプレッド)は景気後退のリスクについて何を示しているか?
為替市場の動向は?
ロシアに対する制裁後、米ドルが中央銀行の外貨準備における有力な準備通貨としての地位を失う可能性は?
現在の危機において、ビットコインが他の暗号資産(仮想通貨)を上回っている理由は?
投資家が確認すべき進展は何か?
投資家はどのような見解を得ることができるか?

 

ウクライナへのロシアの攻撃が続いています。私たちの思いは、ウクライナの人々、同国から脱出しようとしている人々、そして遠くから見守っている彼らの愛する人々のそばにあります。彼らは今、悪夢のような日々を送っています。私たちは、この悲痛な状況が一刻も早く解決することを祈っています。

市場や経済への影響について、投資家の皆さまから引き続き多くのご質問をいただいています。本リポートでは、3月7日現在の情報をもとに、特に関心の高いご質問に対して回答させていただきます。

 

原油価格が上昇を続けているが、先進国経済への影響は?そしてインフレはどれほど悪化するのか?
過去の事例を考察すると、エネルギー価格の高騰により、経済成長への極度の不安が高まる可能性が存在する。一方、米国で賃金の伸びが鈍化したことは明るい材料に

インフレ圧力は明らかに悪化していますが、これは主に、ロシア・ウクライナ危機によるエネルギー価格やその他のコモディティ価格の上昇が要因となっています。

これについて考察してみましょう。世界銀行の数値を用いて計算すると、現在の原油価格が続く場合、国内総生産(GDP)に対する原油への世界の消費者支出は7%を超えることになります—そして、1970年以降、過去50年間において、同数値は2回、7%から10%に達し、どちらの場合も、需要の有意な減少が続きました。そのため、2年以内に世界経済の懸念がパンデミックの恐怖からインフレへの恐れ、そして経済成長に対する極度の不安へと変化するリスクが高まっています。

まだ明らかではありませんが、注目すべき点として、一部のインフレ圧力が緩和されている可能性があります。米国の労働条件は正常に戻っており、より多くの人々が職場に戻っているようです。2月の米雇用統計では、数カ月間大幅に増加していた平均時給が横ばいとなりました 1 。米国だけでなく先進国全体で賃金の伸びが鈍化するのであれば、インフレ圧力が少なくともある程度緩和されていることになるでしょう。

 

米国10年債と2年債の利回り格差(スプレッド)は景気後退のリスクについて何を示しているか?
米国10年債と2年債のスプレッドの縮小は景気後退が差し迫っているとの予兆ではないとみるものの、リスクは高まっている

米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めやロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクの高まりに関する予想の変化を織り込もうとしているため、米国債市場では利回りの推移が大きく変動しています。10年物と2年物の利回り格差の縮小が差し迫った景気後退の予兆とは考えていません。ただし、前述したように、景気後退のリスクは明らかに高まっています。

 

為替市場の動向は?
米ドル、カナダドル、オーストラリアドルなどが上昇した一方、ユーロは下落

最も大きな打撃を受けたのは、当然のことながら、ロシア・ルーブルです。予想通り、米ドルは「安全通貨」とみなされて上昇した一方、ユーロ圏が危機によって大きな打撃を受けていることからユーロは下落しました。「コモディティ通貨」はもちろん、エネルギーと工業用金属の価格高騰の恩恵を受けています。これには、カナダドル、オーストラリアドル、および一部の中南米の新興国通貨が含まれます。

 

ロシアに対する制裁後、米ドルが中央銀行の外貨準備における有力な準備通貨としての地位を失う可能性は?
米ドルは引き続き有力な準備通貨と見なされるだろう

可能性はありますが、基本シナリオではありません。ロシア中央銀行の外貨準備が凍結される期間や、一部の国が米ドル以外の準備通貨をどの程度積み増そうとしているかに大きく依存します。金、あるいは暗号資産でさえ、防衛の観点からさらに注目される可能性があります。

 

現在の危機において、ビットコインが他の暗号資産(仮想通貨)を上回っている理由は?
ビットコインは経済制裁を回避する手段としての側面があることから値上がりした可能性。ウクライナ政府もビットコインで寄付金を受け取っている

2月24日にロシアがウクライナへの侵攻を開始した直後、ビットコインやその他の暗号資産は他のリスクの高い資産と同様に下落しましたが、ビットコインはその後数日で上昇に転じました。これはおそらく、ビットコインが経済制裁を回避し、ユーザーが制裁に関係なく国境を越えて取引できるためです。他の暗号資産も同様の機能を持ちますが、ビットコインは、相対的に確立されたインフラストラクチャである点、より広く認知されている点、そして注目度が高い点から恩恵を受けていると考えられます。これはビットコインへの需要の拡大を後押ししました。ウクライナもビットコインで寄付金を受け取っています。

 

投資家が確認すべき進展は何か?

特筆すべき事項は数多くありますが、以下でいくつか紹介します:

• 人道主義の観点:3月7日、ロシアは、ウクライナの4つの都市から民間人が避難できるようにする停戦の条件を提示したと報じられました。それらがウクライナに受け入れられる可能性は低いと言えます。しかし、これらは今までで最も明確な要求であり、ロシアが予想していたよりも侵攻がはるかに困難であったことを考えると、ロシアが「出口」を探しているかもしれないというかすかな希望を与えてくれます。

• 財政支出の観点:ロシア・ウクライナ危機により、ウクライナへの軍事、医療、人道援助の形で財政支出が短期的に増加しており、長期的には、特に欧州で国防費が増加する可能性があります(例えば、ドイツでは増加額が同国GDPの最大1%に達する可能性があります 2 )。国防費の増加が経済に与える影響は、それがどのように資金調達されるかによって異なります。そしてもちろん、エネルギー消費国で購買力が低下しているように、エネルギー生産国では購買力が高まっています。財政支出の増加は、中央銀行が採用するどのような行動よりも、世界経済にとって重要であることが明らかになるかもしれません。

• エネルギー価格の観点:米国とイランが核合意再建で合意に近づいており、米国や他の国々がイラン産の原油を購入できるようになるという見方が強まっています。また、米国は、原油輸入再開に向けてベネズエラと交渉中です。イランやベネズエラ産の原油は、特に西側の同盟国がロシアの原油の輸入を禁止することを決定した場合、原油価格の上昇を抑制するのに役立つはずです。

• 経済成長の観点:中国は2022年の全国人民代表大会で、今年の国内総生産(GDP)成長率目標を約5.5%に設定しました 3 。これは、過去30年間で最も低い成長目標ですが、ウォール・ストリートが予想する約5.0%よりも高くなっています。より野心的な成長目標は、政策担当者が2022年に中国経済を安定させ、成長させることを決意しているというメッセージを送ることであると考えます。その成長目標を達成するために、中国は2022年にさらに金融および財政支援による枠組みを必要とするでしょう。これは、固定資産投資と不動産市場を後押しするのに役立つ、より柔軟な規制環境につながる可能性があります。

• グローバル株式の観点:中国のようにロシア・ウクライナ危機への影響が少ない国では、株式市場はこれらの圧力を受けにくくなっています。一部の中南米の新興国、ならびにオーストラリアとカナダの株式や通貨は恩恵を受ける可能性があります。

 

投資家はどのような見解を得ることができるか?
金融市場でのボラティリティの高まりはしばらく続くと見込む。長期投資家は、ポートフォリオを十分に分散させることが重要

投資家は当然のことながら、現時点での投資行動に確信が持てません。FRBが金融引き締めを開始する準備をしているため、FRBがよりタカ派のスタンスに転換したことを考えると、金融市場でのボラティリティの高まりはすでに予想されていました。しかし、ここ数週間で状況ははるかに複雑になっています。ロシアのウクライナ侵攻は市場関係者にとって大きなサプライズであったことを認識する必要あり、それは株式市場の急落とコモディティ価格にみられる投機的売買に反映されています。

金融市場では従来予想から大きく逸脱した動きが織り込まれ続ける中、今後、さらに価格が下落し、ボラティリティが高まると考えます。私たちは、予想を修正する必要があります。ロシア・ウクライナ危機は今後しばらく続く可能性がありますが、世界経済が調整するにつれて市場が回復し始めると予想されます。すでに述べたように、今年は株式と債券の両方でボラティリティ(日中でのボラティリティを含む)が大幅に上昇しましたが、パニック的な売却は見られませんでした。これは、不確実性の認識に関連して、ボラティリティがしばらく続く可能性があることを示すもう1つの兆候かもしれません。

長期投資を考える投資家は、今は株式への投資を放棄する時期ではないと私たちは考えます。これまで繰り返してきたとおり、現在はコモディティなどのオルタナティブ資産を含め、資産クラス間および資産クラス内でポートフォリオを十分に分散することが望ましいと考えています。

 

  1. 出所:米国労働省労働統計局、2022年3月4日。
  2. 出所:CNBC、“Germany announces major defense policy shift in face of Russia’s Ukraine invasion”、2022年2月27日。
  3. 出所:ウォール・ストリート・ジャーナル、“China Sets Economic Growth Target of Around 5.5% for the Year”、2022年3月4日。

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MC2022-031