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長期の資産運用で目標とするべき利回りとは?

長期の資産運用で目標とするべき利回りとは?

一人当たりの経済的な豊かさに着目

今回も、人生100年時代の資産形成における「お金のマインド・シフト」を学んでいきましょう。今回は、資産運用における「長期の利回り」についてみていきたいと思います。

今までのマインド:明確な目標はおかない
新しいマインド:世界の一人当たりGDPの成長率を目標とする

長期の資産運用を行う際に、明確な利回り目標を決めるのは難しいと思われる方が多いかもしれません。しかしながら、短期の値動きに振り回されず、じっくりと投資を続けるために、長期の利回り目標は定めるべきだと考えます。では、長期で目指すべき利回りとは、何%が妥当なのでしょうか?

私たちは、資産運用の利回り目標を「世界の一人当たり名目GDP(一人当たりGDP、以下同様)の長期の年平均成長率」と定めることを提案したいと考えています。一人当たりGDPとは、国全体の経済規模を示すGDPを人口で割ったもので、一人当たりの経済的な豊かさ(生活水準など)を示すものです。そして、その成長率は、一人当たりの経済的な豊かさの変化率を示しています。

世界の一人当りGDPの成長率を長期の目標とすべきと考えるのは、二つの理由からです。一つ目の理由は、金融の投資から得られる収益は、実体経済における成長が源泉となっているからです。二つ目の理由は、その数値を目指すことで、個人が世界の人々と同じペースで豊かになっていくことができるからです。実体経済の成長性からかけ離れた無理のある数値目標や、世界の平均的な豊かさの増加に遅れを取るような目標は、適切ではないと考えます。

一人当たりの経済的な豊かさに着目

過去の日本と世界の一人当たりの豊かさを考える

「世界の中での自分の豊かさを維持する」、言い換えれば「世界の中での自分の購買力を維持する」というのは、とても大切な視点だと思います。普段の生活をしていると忘れがちですが、私たちの生活と世界経済は密接に繋がっており、生活の中には、海外のモノやサービスが溢れています。私たちが使うスマ―トフォンの多くは海外製ですし、原油や食料品の多くも輸入品です。世界の人々の生活水準が上昇すれば、それは他国の人の賃金の上昇を通じて、日本で消費するモノやサービスの価格上昇に繋がります。仮に、日本の賃金が上昇せずに、モノやサービスの価格が上昇を続ければ、一人一人の購買力は、世界の中で低下していくことになるのです。

それでは、実際の数値を見て、イメージを膨らませていきましょう。まず、日本の一人当たりGDPは約430万円、世界全体77億人の平均は約130万円となります1 。つまり、日本人は世界の人々よりも、約3.5倍の生活水準があると考えることができます。

次に、この数値の過去の変化率を見てみましょう。日本の一人当たりGDPは、過去20年でほぼ横ばいでしたが、世界の同数値は年平均約4%で成長しました。20年前、日本人の生活水準は世界の平均の約6.1倍でしたが、その差は最近(2018年)の約3.5倍へと、大きく縮まってきたことになります。日本と世界の成長率の差が、個人の経済的な豊かさの水準において、長期にわたって大きな変化をもたらしているのです。

過去から現在まで、日本人の金融資産の多くは預貯金で占められ、2000年以降、定期預金の金利が0.1%以下の水準で推移してきたこともあり、日本の個人金融資産の利回りは1%未満と非常に低い水準でした。もし、日本の多くの方が預貯金から世界への投資に振り向けていたら、この金融資産の利回りは、大きく高めることができたと考えられます。例えば、過去20年間、世界株式指数と世界債券指数の年平均利回りは、それぞれ+4.9%と+3.7% 2 であり、世界の一人当たりGDP成長率の4%と同等かやや上回る実績を残しています。

 

無理のない目標を設定し、海外への積極的な分散投資を続けることが重要

私たちにとって重要なのはこれから先の未来です。20年後、2040年までの世界の一人当りGDP成長率は、過去と同水準の約4~5%程度の成長が継続することが見込まれます3 。そして、この世界の成長を金融投資によって取り入れる行動を取れば、私たちの金融資産は同等の成長を得ることを目指せると考えます。そして、日本人の多くの方がそのような行動を取れば、日本経済自体も大きく変わっていきます。日本の個人金融資産は経済規模(GDP)の3倍以上であり、資産運用で増えたお金が日本での消費などに回ることは、日本経済の成長率を大きく高め、過去は停滞していた賃金や年金の水準が高まることにも繋がるでしょう。日本のような成熟した先進国では、個々人が世界の成長を金融投資で取り入れ、それを収入として生活水準を維持していくことが大切なのです。

反対に、過去のように、日本人の金融資産の多くが利回りほぼ0%の預貯金に留まり、日本経済が低成長を続ければ、日本の世界と比較した生活水準はどうなってしまうのでしょうか? 20年後、日本の一人当たりGDPが横ばい、世界が4~5%の成長を続けたとすると、現在の3.4倍ある日本と世界の人々の生活水準の差は、1.3~1.6倍まで肉薄します。今の時代に提供されている衣食住には困らなかったとしても、例えば、20年後の最新のスマートフォン、燃料自動車、必要な教育プログラムなどを世界から購入することは今より難しくなっていると思います。

広い視野を持って、長期で世界経済の一人当たり成長率という無理のない目標を設定し、海外への積極的な分散投資を続けることが大切です。人生100年時代、これからも人生と社会を豊かにするための、新しいお金との付き合い方を学んでいきましょう。

1. Google公表の世界銀行データ(2018年)を、1米ドル110.28円で換算。名目値ベース。
2. Bloombergよりインベスコが作成。世界株式指数はMSCI World Index、世界債券指数はFTSE世界国債インデックス。米ドルベース。期間は1998年末~2018年末。
3. 各種資料より、インベスコが推計(世界の人口増加率0.5~1%、実質GDP成長率2~2.5%、物価上昇率2~2.5%)。実質GDP成長率については、経済開発協力機構「The Long View: Scenarios for the World Economy to 2060」、PWC「The World in 2050」、世界銀行「Global Economic Prospects」、The Economist「Long-term macroeconomic forecasts」を参考。人口については国際連合「Our world in Data」を参考。物価上昇率については、国際通貨基金IMFの過去10年実績値と先5年予測値を参考。

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