世界の株価指数の本質はどれも同じなの?
株価指数の本質について考えてみる
今回も、人生100年時代の資産形成における「お金のマインド・シフト」を学んでいきましょう。今回は、グローバル投資を考える際に注目すべき「株価指数」に関する新しい視点について紹介したいと思います。
今までのマインド:様々な株価指数の本質は、どれも似ている
新しいマインド:様々な株価指数の本質は、誰がどのように作っているかで大きく異なる
わたしたちの社会の大部分は、民間の企業活動で成り立っています。具体的には、①企業で働くこと、②企業の商品・サービスを利用すること、③企業のオーナーとなること、の3つを通じて社会と繋がりを持っています。そして③の視点で、個人と民間企業を繋いでいるのが株式であり、それを社会全体で見た「ものさし」が株価指数です。
株価指数の例としては、日経平均株価、S&P500種指数、MSCI世界株価指数などがあり、ニュースで目にされることも多いと思います。株価指数は、複数の企業の株価を集計した統計値で、この動きを見れば株式市場の動きの全体感を把握できるという便利なものです。そして、インデックス・ファンドやETFといった金融商品は、これらの株価指数に連動することを目指して運用されています。また、これらの指数は、各種アクティブ・ファンドの運用成績を比較するための参考(ベンチマークと言うこともあります)として用いられたりしています。
株価指数というと、国や業種など、対象となる市場が違うだけで、その本質は大きな差がないと思っている方が多いかもしれません。しかしながら、実際には、いくつかのケースが存在し、それぞれ大きく異なる本質を持っているのです。次章では、代表的なケースや進化の歴史について紐解いていきましょう。
株価指数はどのように進化してきたか?
私たちが多く目にする株価指数は主に3種類に分類されます。
- 新聞社などメディアが発表する株価指数 【例:日経平均株価】
- 証券取引所が発表する株価指数 【例:東証株価指数(TOPIX)、ナスダック総合指数(米国)、 DAX指数(ドイツ)】
- 民間の指数算出会社が発表する株価指数 【例:ダウ平均株価(米国)、S&P500種指数(米国)、MSCI世界株価指数(世界先進国)】
世界初の総合株価指数は、19世紀終わり頃に経済誌ウォール・ストリート・ジャーナルの記者達が作ったダウ平均株価です。当指数は、アメリカを代表する30社*の株価を集計して作られています。当時は、コンピュータが無い時代だったため、銘柄を入れ替えながら、平均値をミスなく管理していくだけでも大変な仕事であったと言われています。そして、現在まで約120年、世界の株価指数は「いかに投資家から見て魅力的か?」という視点で以下のような3つの変化を遂げてきました。 (*2020年10月末現在)
第一の変化:メディア企業から、民間指数会社へ
上記のダウ平均株価は、元々は新聞社と関係があった株価指数でしたが、その後、民間の指数会社へその権利が売却されています。
第二の変化:取引所から、民間指数会社へ
その後、各国の取引所から株価指数が発表されていきました。しかしながら、取引所にとっては、上場企業が上場料を支払ってくれるため、それを維持させたいという動機が働きやすく、投資家の目線をより重視した株価指数を作るのは難しい側面があります。そのため、民間指数会社が、投資家目線の指数を作る役割として存在感を増していきました。
第三の変化:全銘柄指数から、選抜指数へ
さらにその後、投資家にとって優良な企業を選抜することを目指す指数が増えていきました。現在、イギリス、ドイツ、フランス、香港、インドなどの取引所が発表している代表的な指数は、30~100社程度に絞りこまれた選抜指数です。民間指数会社の指数も、ほとんどが選抜指数となっています。
指数の本質を理解しどのような指数に注目すべきかを考える
前述のように、「民間の指数会社」が算出する「選抜指数」に向けて、株価指数は投資家目線で進化してきたと言えます。例えば、アメリカ企業を代表するS&P500種指数は、民間の指数会社が、アメリカの複数の市場に上場する500社を選抜したものです。世界の企業を代表するMSCI世界株式指数は、民間の指数会社が、世界の複数の市場に上場する約1600社を選抜したものです。
一方、日本で代表的な指数の一つである東証株価指数(TOPIX)は、単独市場に上場する2000社超の全銘柄を対象に算出した指数であるため選抜指数ではないことや、取引所の指数であり民間指数会社の指数ではないことを認識しておく必要があるでしょう。TOPIXのような指数は、対象となる取引所全体の動きを把握するためには有効ですが、投資家が長期でより高い投資リターンを目指すために適しているとは言えないでしょう。日本株においても、今後、より投資家目線の指数がスタンダードになっていく事が望まれます。
今回は、グローバル投資を考える上で重要な株価指数について、深く掘り下げて紹介しました。指数はどれも同じだと考えず、広い視野を持ってそれぞれの指数の本質を理解し、どんな指数に注目すべきかを考えることが大切だと思います。人生100年時代、これからも人生と社会を豊かにするための、新しいお金との付き合い方を学んでいきましょう。
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