インベスコの視点

戦術的資産配分:2024年4月号

Tactical Asset Allocation April 2024
リスク資産、バリュー株、中小型株、クレジットをオーバーウェイトし、米国株に対して米国以外の先進国株をオーバーウェイトに再び戻す
インベスコ・ソリューション(以下、「ソリューション」)のマクロ・プロセスは、資産クラス(株式、クレジット、国債、オルタナティブ)、地域、ファクター、リスク・プレミア間の相対的なバリューとリターンの機会獲得を目指し、平均して6カ月から3年の時間軸で戦術的な資産配分の決定を行います。
要約
  • 市場のセンチメントと成長期待は改善を続けています。バリュー株、シクリカル、中小型株へと広がりを見せる株式市場のパフォーマンスは、リカバリー・トレードをさらに有効なものにしています。
  • グローバル戦術的配分モデル1では、引き続きポートフォリオのリスクをオーバーウェイトし、債券よりも株式、米国以外の株式、バリュー株、中小型株を選好しています。低格付けクレジットをオーバーウェイト、デュレーションを中立、インフレ連動債へのエクスポージャーを引き上げています。米ドルをアンダーウェイトしています。

 

マクロ・アップデート

世界中の安定した経済状況は、マクロ市場や金融市場のボラティリティを低下させ続けています。経済データの発表は、各地域のコンセンサスに対して小幅ながら着実にアウトパフォームしており、成長期待の上方修正と投資家のリスク選好の高まりをもたらしています。

このような背景の下、直近1カ月間、強気な市場トレンドが更に高まりました。世界の株式市場は債券市場をアウトパフォームしました。クレジット・スプレッドは、投資適格社債、ハイ・イールド債、新興国ソブリン債全体で縮小し、世界的な景気後退サイクルが始まる前の2021年半ばの水準に達しています。その結果、世界のリスク選好度を示すバロメーターは過去1カ月間に顕著な上昇を示し、直近の高値を上回り、中期的にリスク資産に追い風が吹く可能性を示唆しています(図表1~2をご参照)。最も注目すべきは、3月の株式市場のパフォーマンスが、クオリティや低ボラティリティといったよりディフェンシブな特性に対して、バリュー株や中小型株といった、よりシクリカルなセクターやファクターへと広がりを見せたことです(図表3をご参照)。ソリューションでは、最近のレポートで触れてきましたように、この広範な循環的参加が続くと予想しており、2023年半ば以降、クレジット市場が示してきた成長見通しの改善を裏付けるものと見ています。

図表1a:マクロ・レジーム認識は引き続き回復期を示す

出所:ブルームバーグ、マクロボンド、Invesco Solutions調査・試算。Invesco Solutionsの独自先行経済指標。マクロ局面のデータは2024年3月31日現在。景気先行指数(LEI)は、経済成長の水準を示す独自の先行指標。グローバル・リスク選好度サイクル指数(GRACI)は、市場のリスクセンチメントを示す独自の指標。先進国(除く米国)には、ユーロ圏、英国、日本、スイス、カナダ、スウェーデン、オーストラリアが含まれる。新興国市場には、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、台湾、中国、韓国、インドが含まれる。

図表1b:直近12カ月の地域別マクロ・レジームの推移

出所:Invesco Solutions、2024年3月31日現在。

図表1c:先進国市場と中国を除く新興国市場は徐々に改善

出所:ブルームバーグ、マクロボンド、Invesco Solutions調査・試算。Invesco Solutionsの独自先行経済指標。マクロ局面のデータは2024年3月31日現在。景気先行指数(LEI)は、経済成長の水準を示す独自の先行指標。グローバル・リスク選好度サイクル指数(GRACI)は、市場のリスクセンチメントを示す独自の指標。過去のパフォーマンスは、将来の運用成果を保証するものではありません。

リスク選好は依然として強く、直近の高値を上回り、株式は債券市場をアウトパフォーム、クレジット・スプレッドは縮小

出所:ブルームバーグ、MSCI、FTSE、Barclays、JPMorgan、Invesco Solutions調査・試算。1992年1月1日から2024年3月31日までのデータ。Invesco Investment Solutionsの独自先行経済指標。景気先行指数(LEI)は、経済成長の水準を示す独自の先行指標。グローバル・リスク選好度サイクル指数(GRACI)は、市場のリスクセンチメントを示す独自の指標。過去のパフォーマンスは、将来の運用成果を保証するものではありません。

株式市場のパフォーマンスをバリュー株と中小型株に広げることで、資産全体の循環的な価格調整が確認されている

出所:ブルームバーグ、Invesco。2024年3月31日現在。株式:MSCI ACWI Net Return USD Index、債券:Bloomberg Global Aggregate USD Hedged、新興国株式:MSCI Emerging Markets TR Index、先進国株式:MSCI World TR Index、投資適格債:Bloomberg US Corporate Excess Return Index、ハイ・イールド債:Bloomberg US High Yield Excess Return Index、シクリカル・ファクター:Russell 2XSize/2XValue 5% capped total return index、ディフェンシブ・ファクター:Russell 1000 2XQuality/2XLow Volatility 5% capped total return index and equivalent indices for FTSE Developed ex USA and FTSE Emerging Indices.

インフレは先進国全体で引き続き底堅さを見せていますが、これは主にコモディティ価格の上昇に後押しされたものです(図表4をご参照)。これは引き締め再開の脅威をもたらすものではありませんが、米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)がすでに示唆している緩和サイクルの開始を延期するか、その範囲を縮小する可能性があります。

全体として、マクロ情勢、そしてソリューションの世界経済のマクロレジーム(市場局面)はほとんど変わっておらず、世界経済とその主要地域ブロックの回復期を示唆し、成長率は長期トレンドを下回り、改善しています。このような状況は今後数カ月間続くと予想されます。ソリューションのルールに基づくプロセスは、循環的な特性を持つリスク資産を選好するポートフォリオのポジショニングを維持しています。

図表4:各地域でインフレ率は緩やかに上昇

出所:ブルームバーグ、2024年3月31日現在のデータ、Invesco Solutions調査・試算。米国のインフレ・モメンタム・インディケーター(IMI)は、消費者物価や生産者物価、インフレ期待調査、輸入物価、賃金、エネルギー価格などの指標を対象に、過去3カ月間のインフレ統計の変化を測定します。プラス(マイナス)は、過去3カ月の平均でインフレ率が上昇(低下)していることを示します。

投資ポジショニング

グローバル戦術的配分モデルでは、ベンチマーク対比のリスクをオーバーウェイトするスタンスを維持し、債券に対して株式をオーバーウェイトし、新興国市場、シクリカル・セクター、バリュー株、中小型株を選好します。米国株式に対して米国以外の先進国株式をオーバーウェイトに戻します。債券では、低格付けセクターを通じ、クレジット・リスク2のオーバーウェイトを継続し、デュレーションは中立を維持し、一般債よりもインフレ連動債(TIPS)のエクスポージャーをさらに高めました(図表5~8をご参照))。米ドルについては引き続きアンダーウェイトとします。

詳細:
  • 株式では、クオリティ、低ボラティリティ、モメンタム・ファクターよりも、バリュー株と中小型株のオーバーウェイトを継続します。最近の経済データとリスク資産間(クロスアセット)の相対パフォーマンスは、依然として底堅い成長、リスク選好度の改善、成長期待を示しています。このようなマクロ的背景は、歴史的に、バリュー株や中小型株など、営業レバレッジが高く、成長期待の反発に対する感応度が高いシクリカル・ファクターに有利となっています。同様に、ヘルスケア、生活必需品、公益事業、情報技術よりも、金融、資本財・サービス、素材、エネルギーなどのシクリカル・セクターへのエクスポージャーを選好します。地域的には、リスク選好度の改善と米ドル安期待に支えられ、引き続き新興国市場のオーバーウェイトを維持します。欧州と日本の製造業景況感調査の改善を受けて、米国株に対して米国以外の先進国株のオーバーウェイトを再構築します。受注/在庫比率は短期的な景気上昇を示唆しています。
  • 債券では、ハイ・イールド債、バンクローン、新興国ハード・カレンシー債を通じ、クレジット・リスクをオーバーウェイトしています。クレジットのスプレッドはほとんどのセクターで歴史的な低水準で推移しています。しかし、ボラティリティは引き続き抑制され、クレジット市場は安定したマクロ環境のもとで安定した利回りを提供すると予想されます。クレジット資産については、キャピタルゲインよりも国債に対するインカムの優位性に限定されます。ソブリン債については、インフレが底堅く、コモディティ価格からの上昇圧力があることから、米国と欧州の一般債よりもインフレ連動債(TIPS)へのエクスポージャーをさらに高めました。
  • 為替では、景気回復局面では通常、リフレーションによる米国以外の資産への力強いフローを伴うため、米ドルをアンダーウェイトとします。先進国市場では、ユーロ、英ポンド、ノルウェークローネ、スウェーデンクローネ、シンガポールドルを、スイスフラン、日本円、豪ドル、カナダドルに対して選好します。新興国市場では、韓国ウォン、チリペソ、タイバーツ、中国人民元など、低利回りでバリュエーションが割高な通貨に対して、コロンビアペソ、ブラジルレアル、南アフリカランド、インドネシアルピアなど、魅力的なバリュエーションをもつ高利回り通貨を選好しますが、米ドル安のシナリオでは、これらの通貨が好調に推移すると予想されます。
図表5:戦術的資産配分のポジショニング(相対比較)

出所:Invesco Solutions、2024年4月1日。米ドル以外の通貨は、MSCI ACWIインデックスの通貨構成に代表される外国為替エクスポージャーで示されています。例示的目的のみ。

図表6:戦術的資産配分のポジショニング(ファクター)

出所:Invesco Solutions、2024年4月1日。例示的目的のみ。ニュートラルとは、均等に加重されたファクター・ポートフォリオを指します。

図表7:戦術的資産配分のポジショニング(セクター)

出所:Invesco Solutions、2024年4月1日。例示的目的のみ。独自のセクター分類手法に基づくファクターおよびスタイル配分から導き出されたセクター配分です。2024年3月時点では、シクリカル:エネルギー、金融、資本財・サービス、素材。ディフェンシブ:生活必需品、ヘルスケア、情報技術、不動産、公益事業。ニュートラル:一般消費財・サービス、コミュニケーション・サービス。

図表8:戦略的資産配分のポジショニング(通貨)

出所:Invesco Solutions、2024年4月1日。例示的目的のみ。通貨配分プロセスでは、外国為替市場における次の4つの要因を考慮します。1)世界の他の地域に対する米国の金融政策、2)コンセンサス予想に対する世界の成長率、3)通貨利回り(すなわちキャリー)、4)通貨の長期的なバリュエーション。

Footnotes

  • 1.

    ベンチマークはMSCI All Country World Index 60%とBloomberg Global Aggregate Index (Hedged) 40%で構成。

  • 2.

    クレジット・リスクは、DTS(デュレーション×スプレッド)で計測。

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