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関税の不透明感と市場の動揺の中で冷静さを保つ

関税の不透明感と市場の動揺の中で冷静さを保つ
〔要旨〕
  • 米国株:先週の米国株は、不透明感からテクノロジー株を中心に大きく売られた
  • 世界における好材料:米国は逆風にさらされているが、世界の他の地域からは良い報せも舞い込んでいる
  • 長期的視点:歴史を通じて劇的な売りはあったが、長期的にみると株価は上昇してきた
先週市場を動かしたものは何か?

長期に重点を置く

世界で見られる好材料

先を見通しつつ冷静さを保つ

注目の日程
 

先週もまた投資家は、政策の不透明感と市場の動揺に見舞われました。先週の米国株式市場は大幅な売り越しとなり、金曜日の動きを受け米国株、特にテクノロジー株が大きく下落したことは驚くに値しません1。しかし米国が逆風にさらされる中で、世界の他の地域からは良い報せも舞い込んでいます。このような時こそ投資家は、短期的な市場の反応に一喜一憂せず、自身の時間軸に集中することが重要です。私たちが知り得たこと、そして注目していることは以下のとおりです。

 

先週市場を動かしたものは何か?

先週、米国株にとって悪い報せがいくつかありました:

  • 米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として選好する米国のコア個人消費支出(PCE)価格指数が、前月比0.4%、前年同月比2.8%上昇しました2。これは予想をわずかに上回り、インフレ再燃の可能性に対する懸念に拍車をかけました。
  • 直近のコンファレンス・ボード調査によると3、3月の米消費者信頼感指数は2月の100.1 を大きく下回って92.9となり、過去4年間で最低水準となりました。さらに悪いことに、消費者期待サブ指数が2月の74.8から3月は65.2に低下し、12年ぶりの低水準となりました。通常、景気後退を示唆するクリティカルな水準は80未満のため、この数値は懸念を生じさせます。
  • 3月のミシガン大学消費者調査の確報値は、速報値よりも悪化しました4。重要なのは、米国の消費者心理が悪化し続けていることです。消費者心理は2月から大幅に低下して57.0となり、2022年11月以来の低水準となりました。消費者期待サブ指数は52.6に落ち込みました。それだけでなく、インフレ期待は劇的な上昇傾向となっています。1年先の消費者インフレ期待は5.0%に上昇しました。5年後の消費者インフレ期待は4.1%に上昇し、1993年2月以来の高水準となりました。このことは、(前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)記者会見で、パウエル議長がインフレ期待は安定していると述べたにもかかわらず、)長期的なインフレ期待がそれほど安定的に維持されていないことを示しており、またスタグフレーションのリスクが大きく高まっていることを示唆しています。
  • 先週トランプ政権は、特に米国外で製造される自動車と一部の自動車部品に25%の関税を課すとの措置を含む、さらなる関税措置の導入を発表しました。これは4月2日に発効予定となっています。
  • そして「解放の日」となる4月2日が間近に迫っています。この日、米国は輸入品にさらなる関税を課すこととなっていますが、それがどの程度の範囲や深度に及ぶかは依然として不透明です。株式市場は不確実性を嫌うため、これにより当然、市場の動揺はさらに増しています。一部には、関税が今後数カ月で1940年代の水準に達すると予想するエコノミストもいます。
     

長期に重点を置く

ここ8~10週間、投資家から同じ質問を受け続けていますが、それは「資産配分を変えるべきか?」というものです。私の答えはいつも同じです:長期の目線を持ち、3つの主要資産クラス(株式、債券、オルタナティブ)によく分散投資されている投資家であれば、通常それを維持する方が良いと考えられます。

「言うは易く行うは難し」であることは百も承知です。ニュースのヘッドラインや市場の動きは、投資家を大いに不安にさせることがあります。私から一つの見方をご提供しましょう。今週私の家族は、私の母の90歳の誕生日を祝う予定ですが、この不確実性と市場のボラティリティのさなかで母が誕生日を迎えるのは、ある意味ふさわしいように思います。母は1935年、フランクリン・ルーズベルトが大統領だった大恐慌のさなかに生まれました。生まれた月の米国の失業率は17.54%でした5。その後第二次世界大戦、1940年代の高関税、キューバ危機、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺、ベトナム戦争、ウォーターゲート事件、スタグフレーション、1970年代の株式市場の低迷、冷戦終結、米国同時多発テロ事件(9.11)、世界金融危機など多くの出来事を経て生き抜いてきました。母の生きてきた時代において、不確実性こそが1つの確実性だったと言えます(またこのような騒乱と変化にもかかわらず、これと共に株式市場の数十年にわたる躍進もみられました)6。時には非常に劇的に売り越された時期もありましたが、株価は長期的には上昇してきました。
 

世界で見られる好材料

現在でも、米国が逆風にさらされる一方で、世界の他の地域からは良い報せも舞い込んでいます。例えば、ユーロ圏の製造業活動は改善に向かっているようです。直近の購買担当者景気指数(PMI)調査で製造業PMIが48.7に上昇し、ユーロ圏では過去26ヵ月で最高水準となったことにそれが示されています7

以前にも申し上げたように、欧州では財政支出、特に防衛支出の大幅な増加という地殻変動的な変化が起きています。ドイツだけでなく、フランスも最近、防衛支出の大幅な増額を発表しました。私は、こうした動きは今後もさらに続くだろうとみています。これは欧州経済全般、特に製造業にとって良い兆候となるでしょう。私は、財政支出の増加により、景気が上向く兆しである「グリーンシュート」が今後数ヶ月のうちに見られるのではないかと考えています。
 

先を見通しつつ冷静さを保つ

4月2日に大幅な関税引き上げが発効する可能性があることから、今週は非常に重要な週となります。この点は既に市場に大きな不安を与えています。さらに金曜日には、米国とカナダの月次雇用統計、そして消費者物価指数(CPI)やPMIが発表されます。また今週初めには、オーストラリア準備銀行の金融政策決定も予定されています。

ここ数週間に私がよくされる質問、「資産配分を変えるべきか?」に戻りましょう。この質問をされた時、私はたいてい次のように聞き返します:「大統領の任期より長期の時間軸でみていますか?」「(通常想定される)景気後退の期間よりも長期ですか?」「10年以上の長期ですか?」十分長い時間軸(私の母ほどである必要はありませんが)で構えていれば、特にポートフォリオが十分に分散されており、ボラティリティを緩和するのに役立つ低相関の資産クラスへのエクスポージャーがある場合、株式その他のよりボラティリティの高い資産クラスへの配分を維持することができるからです。今週は関税引き上げの可能性があり、市場の動揺や株を手放したくなる衝動が(気持ちはよく分かりますが)予想されることから、これを気に留めておくことが重要です。シートベルトをしっかりと締め、冷静さを保ちつつ前に進みましょう。そして私の母へ、誕生日おめでとう!
 

注目の日程

公表日

指標等

内容

 3月31日

ドイツCPI

インフレの動向を追跡

 3月31日

シカゴ購買部協会景気指数(PMI)

製造業・サービス業の経済の健全性を示す

 3月31日

日銀短観

日本企業の経済・業況に関する見方を追跡

 3月31日

日本失業率

労働市場の健全性を示す

 3月31日

オーストラリア準備銀行
金融政策決定

金利の道筋に関する最新の決定を発表

 4月1日

ユーロ圏CPI

インフレの動向を追跡

 4月1日

ユーロ圏失業率

労働市場の健全性を示す

 4月1日

米国雇用動態調査(JOLTS)

求人、採用、離職に関するデータを収集

 4月1日

米国製造業PMI

製造業の経済の健全性を示す

 4月1日

米国ISM製造業PMI

製造業の経済の健全性を示す

 4月1日

インド製造業PMI

製造業の経済の健全性を示す

 4月2日

米国ADP雇用統計

米国労働市場の健全性を示す

 4月2日

米国製造業新規受注

製造業の健全性を示す

 4月2日

日本サービス業PMI

サービス業の経済の健全性を示す

 4月2日

中国財新サービス業PMI

サービス業の経済の健全性を示す

 4月3日

ユーロ圏サービス業PMI

サービス業の経済の健全性を示す

 4月3日

英国サービス業PMI

サービス業の経済の健全性を示す

 4月3日

米国サービス業PMI

サービス業の経済の健全性を示す

 4月3日

米国ISMサービス業PMI

サービス業の経済の健全性を示す

 4月3日

日本家計調査

消費の健全性を追跡

 4月4日

米国雇用統計

米国の給与所得者数、週平均労働時間、時給及び
失業率のいくつかのバージョンを推計

 4月4日

カナダ雇用統計

雇用、失業、労働参加に関するデータを収集

  • 1.

    出所: ブルームバーグL.P.、2025年3月28日。ここでいう米国株はS&P500種指数(週間で1.53%下落)。またテクノロジー株はナスダック指数(週間で2.59%下落)。ナスダック総合指数は、ナスダック証券取引所に上場するおよそ3,000の普通株の時価総額加重平均指数。

  • 2.

    出所:米国経済分析局、2025年3月28日

  • 3.

    出所:コンファレンスボード、2025年3月25日

  • 4.

    出所:ミシガン大学消費者調査、2025年3月28日

  • 5.

    出所:全米経済研究所、2025年3月31日

  • 6.

    出所:ブルームバーグL.P.、2025年3月28日。ダウ工業株30種平均は1935年3月以来38,149%上昇。

  • 7.

    出所:S&Pグローバル/HCOB、2025年3月27日

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